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アクセルを踏んでないのにクルマが進む「クリープ現象」ってどういう仕組み? この「副産物」がじつは人間の感性にぴったりだった
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WEB CARTOP より

クリープ現象とはそもそもなにか


 自動車のメカニズムとは面白いもので、理にかなっていなくても感性があってしまうと、そちらをよしとする傾向がある。AT車のクリープ現象もそのひとつといえるだろう。クリープ現象、すなわちシフトレンジをDやLに入れておくと、アクセルを踏まなくても(アイドリング状態)、ゆっくりとだがクルマが動いてしまう現象だ。

 シフトレバーとクラッチペダル、アクセルペダルを操作しなければクルマが動かないMT車に対し、AT車はクルマが動くポジション(D、L、R)にシフトセレクターを入れておくと、アクセルペダルを踏まない(アイドリング)状態でもクルマが勝手に動いてしまう特性がある。そのために、Dレンジにセレクトしたまま信号待ちで停車するような場合には、ブレーキペダルに足を置くことで停止状態を保っておく運転操作が必要になる。



 さて、AT車の運転を思い起こしてほしいのだが、信号待ちの際にクルマが動かないよう、シフトセレクターをNまたはPに入れ直している人がどれほどいるだろうか? おそらく、ほとんど人はDレンジのままブレーキペダルに足を置くことで、クリープ現象によりクルマが動き出すことを防いでいるのではないかと思う。

 では、AT車のクリープ現象はなぜ起こるのか?

 その理由をメカニズム面から見ていこうと思うが、その前に、通常我々が一般にATといっているのは、エンジンの出力をトランスミッションに伝える際にトルクコンバーター(流体継ぎ手)を利用し、その後段にあるギヤ式トランスミッションで変速作用を行うシステムを指すことを再確認しておきたい。AT(自動変速機)を言葉どおりに解釈すれば、CVTやツインクラッチ方式(一般的な総称はDCT)もATなのだが、これらにはこうした専用の名称が設けられ、従来から存在するトルクコンバーター式変速機をATと表現している。



 ATは、ギヤ変速のためエンジン出力の断続を機械的なクラッチ方式を使わず、オイル(流体)を介することでギヤ変速時の衝撃を吸収する方式が採られている。逆にいえば、エンジン側とミッション側は常につながっている状態で、アイドリング回転域でもわずかながら、エンジン出力がミッション側に伝わっていることになる。

 このわずかなエンジン出力の伝達がクリープ現象で、ドライバーが何も操作しないと、極低速ながらクルマが動くことになる。これを防ぐためにDレンジにセレクトしたまま停車する際には、ブレーキペダルを踏むことで、クルマの動き出しを抑えることになる。


人気車種続々! WEB CARTOP 中古車検索 - Click 投稿日: 2025年11月21日 10:00 TEXT: 大内明彦 PHOTO: RM Sotheby's/WEB CARTOP アクセルを踏んでないのにクルマが進む「クリープ現象」ってどういう仕組み? この「副産物」がじつは人間の感性にぴったりだった (2/2ページ) Category 自動車コラム Tags AT ミッション メカニズム クリープ現象は人間の思考にマッチした構造だ


 冒頭で触れた「理にかなっていなくても感性が合ってしまうと……」、という意味は、Dレンジにセレクトしておけばクルマが動くのは当然のことで、停車させておきたいのならPレンジかNレンジにセレクトしておくのが「理にかなった」停車方法となり、クルマが動くDレンジにセレクトしたままブレーキペダルで停車を保つ方式は、理にかなってはいないが、感性にあった停車方式ではあり、再度動き出す際にはブレーキペダルから足を放してアクセルを踏み込むだけでよい。



 しかも、トルクコンバーターは微細ながらエンジン出力を常にトランスミッションに伝えている状態にあるため、アクセルペダルを踏み込んでからの加速反応に遅れがない。これがPレンジやNレンジからの動き出しとなると、セレクターポジションを走行レンジに再シフトしてから(当然フットブレーキの操作も連動する)の加速となり、その反応にわずかな遅れが生じてしまう。ドライバー的にいえば「かったるい」ということになる。



 つまり、クリープ現象は、トルクコンバーター式ATと表裏一体となって生じる現象といえど、この動きを抑え込むブレーキペダルの踏み込みは、ドライバー感性としてごく自然な操作であり、AT車の運転に関して第2の本能ともいえる動きになっている。

 逆に、AT車の動き出しでクリープ現象に慣れたドライバーにとって、CVTのようにクリープ現象のない反応には違和感を覚え、CVTを嫌う要因にもなっていた。このため、CVTにトルクコンバーターを組み合わせて使う方式(理論上CVTにトルクコンバーターは必要ない)も実用化されたほどである。



 信号待ちのような短時間の停車状態を保つため、Dレンジにセレクトしたままフットブレーキを踏む運転操作は、一見すると機械の動きに反する不合理な運転操作のようにも思えるが、同じ状況でMT車を停車させる場合、ギヤはニュートラルでも不用意にクルマが動かないようフットブレーキに足を置くケースが多いのではなかろうか。この操作はAT車の場合と同じである。



 トルクコンバーターの特性を考え合わせれば、AT車で短時間の停車を行う場合、Dレンジにホールドしたままフットブレーキで停車を行う操作は、むしろ合理的な運転操作といえるかもしれない。AT車は、クリープ現象によってアイドリング状態でも少しずつクルマが動く特性を備えている。そして、AT車のドライバーは、無意識のうちにこの動きに対応した運転操作を行っている、ということになる。


引用元:https://www.webcartop.jp/2025/11/1761527/


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