なぜ自動速度取締機設置路線の看板を設置しているのか? 親切心から? それとも義務? 看板がないともっと摘発ができるはずなのになぜ?
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ベストカーWeb より

機(オービス)が設置されています。でもなぜ、取締りをしようとしているのに、事前に提示しているのでしょうか? この看板がなければもっと摘発できるはずなのに……。本企画では看板の意味からオービスの仕組み、便利な対策アプリまで徹底解説します。
文:ベストカーWeb編集部/写真:ベストカーWeb編集部、Adobe Stock、写真AC(トビラ写真)
「自動速度取締装置」の看板は義務? それとも親切心から?
まず、「オービス」とは何かを確認しましょう。オービス(自動速度取締装置)は、走行中の車両の速度違反を自動で検知・撮影し、後日違反通知を行う取り締まり装置です。法律上、速度超過の事実を立証する証拠として必要であり、設置の目的は単なる運転抑止ではなく、あくまで法的手続きを裏付けるためです。
にもかかわらず、道路に「自動速度取締機設置路線」の看板が設置されています。仮に看板がなければ、摘発率は上がるかもしれません。それでもなぜ告知するのか? その理由は、プライバシー権・肖像権に関する配慮と、違法収集証拠排除法則への対応にあります。
判例では、無断撮影であっても、犯罪(速度違反)が行われていることは明らかで、かつ証拠保全に緊急性がある場合には、憲法13条(肖像権・プライバシー権)に反せず、法的に許容されるとの判断がなされています(最高裁・昭和61年2月14日判決)。
オービスによる自動撮影は、速度超過違反をしたときにのみ撮影されるため、犯罪の証拠として必要性が高いことから問題ないということです。ただ、オービスでの撮影が無断撮影であることに変わりはありません。
そのため、速度超過の違反をした運転者と警察が肖像権やプライバシー権で揉め事にならないようにするために、事前に告知の表示をしているのです。
では、看板設置が法的に義務かと言えば、実はそうではありません。設置しているケースが多いものの、必須ではない地域もあります。
それでも告知をするのは、前述のように被撮影者側とのトラブル回避や信頼確保が目的です。「取り締まるぞ」という威圧ではなく、「ここには取締装置があります。注意してください」と知らせることで、ドライバーの安全運転を促す効果もあります。
速度違反でオービスが反応した時は、赤色や白色に発光します。光は強く、昼夜問わず一般的に運転者が認識できるようになっています。
オービスが反応する具体的な速度は公表されていませんが、一般道では制限速度30km/h以上の超過、高速道路では制限速度40km/h以上の超過でオービスが光ると広く考えられています。ただし、生活道路などに設置された移動式オービスの場合、15km/hほどの速度超過でも光るケースがあるようです。
オービス設置にはいくらかかる?
近年、警察では小型・可搬型のオービスが急速に普及しています。特に通学路や生活道路など、従来の方式では取締困難な場所でも利用できるタイプです。三脚や軽量機器で簡単に設置可能なため、省スペース・少人数でも運用できるのが特徴で、効果的な取締りが実現しています。
しかし、こうした移動式オービスでは告知看板を設置するのが困難なケースも多く、場所や時間が予告できません。そのため、多くの都道府県では公式WEBサイトやSNS等で設置予定エリアを告知する形で対応しています。
ここでオービス設置にはいくらかかるか紹介しましょう。オービス設置には、相当なコストがかかります。例えば、可搬式は1000万~2000万円、半可搬式も同程度、固定式に至っては本体約3000万円、さらに工事費で約600万円、総額で3600万円以上になる場合もあるのです。
それでも巨額投資が続く背景には、速度超過が重大事故を招くという現実があります。神奈川県警のデータによると、速度が30km/hを超えると死亡事故の割合は急増し、特に高速道路で60km/h以上になると致命的リスクが高くなるとの報告もあります。
さらに、交通死亡事故を起こした約6割が過去に速度違反を受けた経験があるというデータもあるほどで、速度抑制は命を守る重要な対策なのです。
ドライバーが使える“防衛術”としてのアプリ導入
近年では、オービスの存在を知らせてくれるスマートフォンアプリも活用されています。代表的なものには「オービスガイド(有料版あり)」「Yahoo!カーナビ(無料)」「ナビロー」などがあります。
これらはGPSとオービス設置地点のデータを照合し、近づくと警告を発してくれる機能を備えています。一部はユーザー通報によるクラウド型情報更新も搭載し、リアルタイム性も向上しています。
ただし、移動式オービスへの完全対応が難しい場合があり、過信は禁物です。あくまで補助として安全運転を支えるツールと考え、基本は法定速度を守ることが大前提です。
まとめ:看板は“親切”を超えた、信頼・安全への配慮
自動速度取締装置設置路線の看板の存在は、「親切」だけではない、責任ある取り締まりとドライバーへの配慮の証です。結局、最も確実で安心なのは、どんな場所でも、常に法定速度を守った運転を心がけること。そうすれば、オービスも警告看板も気にする必要はなくなります。
・オービス設置看板は法的義務ではなく、プライバシー配慮や透明性確保のための“任意告知”である点。
・移動式オービスの普及により、看板による告知が難しい状況が増えているが、SNSやHP告知で対応している点。
・多額のコストをかけてでも速度抑制に取り組む背景に、“命を守る安全対策”という明確な使命感がある点。
・アプリの活用など、現代のドライバーも自衛手段を持つことで、安全運転をサポートできる点。