カタログ数値の「最小回転半径」だけみてクルマを選んじゃダメ! 本当の「小回り性能」とは
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WEB CARTOP より

舵角やタイヤサイズもクルマの小まわり性能に影響する
街乗りメインで愛車を探すときの条件に「小まわりが利くこと」を挙げる人は多い。自ずと小まわり性能を示すカタログスペックである「最小回転半径」に着目してクルマ選びを進めることだろう。
あらためて「最小回転半径」について説明すると、ステアリングを目いっぱい切り込んだ状態で、低速で動かしたときに“外側の前輪タイヤ中心が描く円の半径”を指している。
この数値に影響する主な要素は、舵角(最大切れ角)とホイールベースだ。舵角が大きいほど、そしてホイールベースが短いほど最小回転半径は小さくなる。ボディサイズが小さいほどホイールベースが短くなる傾向にあるため、小まわり性能重視であれば小さいクルマを選ぶのが正解という考え方をしている人は多いのではないだろう。
しかし、最小回転半径において、ボディサイズは直接的には関係ない。じつはボディサイズが同じ軽自動車でも、最小回転半径は異なっている。
ボディサイズが共通の軽自動車で比べてみよう。ここではスズキのラインアップから商用車、ハイトワゴン、スーパーハイトワゴン、SUVなどをピックアップして、最小回転半径とホイールベースの関係をまとめてみた。
キャリイ:最小回転半径3.6m・ホイールベース1905mm・タイヤサイズ145/80R12
ワゴンR:最小回転半径4.4m・ホイールベース2460mm・タイヤサイズ155/65R14
スペーシア:最小回転半径4.4m・ホイールベース2460mm・タイヤサイズ155/65R14
エブリイワゴン:最小回転半径4.5m・ホイールベース2430mm・タイヤサイズ165/60R14
ジムニー:最小回転半径4.8m・ホイールベース2250mm・タイヤサイズ175/80R16
圧倒的にホイールベースが短いキャリイの最小回転半径が3m台となっているのは別格として、FFプラットフォームの軽乗用車であるワゴンRやスペーシアよりジムニーやエブリイワゴンの最小回転半径は大きい。
比較すると、エブリイワゴンは30mm、ジムニーに至っては210mmもホイールベースは短いが、タイヤサイズの影響などで舵角が稼ぎづらいために、最小回転半径が大きくなってしまうと捉えることができる。
また、スペーシアでも165/55R15サイズのタイヤを履くターボエンジン搭載グレードの最小回転半径は4.6mと大きくなる。タイヤサイズも小まわり性能に影響する項目といえることが見て取れる。
リアルワールドではボディ最小回転半径が重要
しかしながら、カタログスペックの最小回転半径だけではリアルワールドにおける小まわり性能を理解することはできない。
冒頭でも記したように、最小回転半径は外側前輪の軌跡でしかない。ボディサイズに対して極端にホイールベースを短くすればカタログ上の最小回転半径は小さくできるが、リアルワールドではボディのオーバーハング(前後に飛び出ている部分)と障害物との干渉も考慮しなくてはいけないからだ。
タイヤの軌跡としては曲がれても、実際にはオーバーハングの部分が建物などに当たってしまうため曲がれない……といったケースも珍しくない。実際の小まわり性能においては、そうしたボディ形状についても考慮する必要がある。
そこで注目したいのが「ボディ最小回転半径」という考え方だ。これはタイヤの軌跡ではなく、バンパー先端での最小回転半径を示すもの。当然ながら、カタログスペックの「最小回転半径」よりは大きくなる。
たとえば、トヨタが公表しているRAV4の数値でいえば、届出値の最小回転半径が5.5mとなっているのに対して、参考測定値のボディ最小回転半径は5.9mとなっている。
できれば、国産全メーカーが参考スペックとしてボディ最小回転半径を記載してくれると、小まわり性能を重視したクルマ選びにおいて役に立つことだろう。わかりやすい指標として、広まることを期待したい。
なお、リアルワールドでの小まわり性能に影響するファクターとして、重視したいのは車両感覚の掴みやすさ(前後端の位置の把握しやすさ)だろう。ただし、車両感覚の掴みやすさについては個人差も大きい部分であり、ボディサイズのようなスペックだけでは判断しづらい。
クルマによってはボンネットのキャラクターラインによってノーズ位置を把握しやすいようなデザインを与えられていることもある。そうしたカタログや試乗記に書かれることの少ない部分については、購入前に運転席に座るなどして確認するといいだろう。