「軽自動車は4人乗り」って法律の規定じゃなかった! それでも5人乗り軽が登場しないワケ
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5人乗れる軽自動車があってもよいのでは?
新車販売の4割近くを占める軽自動車は、実質的に「ニッポンの国民車」といっても過言ではないだろう。
そんな軽自動車にはさまざまなバリエーションが存在しているが、全高1700mmを超え、後席スライドドアを備えた「スーパーハイトワゴン」が主流となっている。
全長3400mm・全幅1480mm・全高2000mmとボディサイズに制限がある軽自動車において、高さ方向でスペースを稼ぎ、キャビンの快適性を高めたスーパーハイトワゴンが人気を集めるのは納得だ。
しかしながら、「あれほど車内が広く感じるのに、乗車定員が4名となっているのは納得いかない」という声もある。一方で、「軽自動車の最大定員は4人と法律で決まっているんだ」と主張する人がいたりもする。
実際のところ、軽自動車の最大定員が法律で決まっているというのは都市伝説といえるだろう。乗車定員に関する、道路運送車両法の保安基準準第22条第1項を見ていくと、以下のように記されているだけで、軽自動車だからといって定員を制限するという文言は見当たらない。
自動車の運転者以外の者の用に供する座席(またがり式の座席及び幼児専用車の幼児用座席を除く )は、1人につき、幅400mm以上の着席するに必要な空間を有すること。
座面や空間として「一人当たり400mm」の幅が必要というのが、乗車定員を決める基本ルールであると理解できるだろう。
この基準において、「3席以上連続した座席のうち両端の座席以外の座席であってその幅が400mm未満のもの」は「この基準に適合しないものとする」と明記されている。単純化して考えると、保安基準が求める条件において大人3人が並んで座ろうと思ったら、座面や空間として1200mmの幅が求められることになる。
パッケージングに優れた軽自動車においては室内幅が1300mmを超えていることは珍しくない。スペース的には3人がけも可能では? と思ってしまうが、そう簡単にはいかないようだ。
上記の保安基準では「座席面の上方のいずれの位置においても車室内に幅400mm以上となる空間を有する」ことが求められている。この条件をいいかえると、室内幅の狭いところでも1200mm以上を確保していなければ後席3人がけにするのは難しい。側面衝突の安全性などを考慮しつつ、いずれの位置でも1200mm以上の室内幅を実現するのは現実的ではないといえる。
じつは、この保安基準はすべてのクルマに等しく適用される。軽自動車でなくともシートや室内幅が狭ければ、乗車定員が4名とされてしまう。クーペフォルムのスポーツカーやオープンカーなどでは後席が2人がけとなっていることは珍しくない。
ただし、スポーツカーが4名乗車としているのには室内幅以外の理由もあったりする。乗車定員を減らすことでシートベルトなどのぶんが軽量化できるし、車両総重量(乗用車の場合、車両重量+乗車定員×55kg)を抑えることで、設計において有利になることが期待できるためだ。
エンジニアリング上の事情で5名乗車の軽自動車は生まれない
同様のことは軽自動車でもいえる。4名乗車のモデルを5名乗車にすると車両総重量が55kgほど増えてしまう。ユーザー的には「座れば問題ない」と思うかもしれないが、メーカーはフル乗車・フル積載での走行安定性を考慮する必要がある。
簡単にいえば、ブレーキやサスペンションにコストをかける必要が出てくる。しかし、それは軽自動車の主要な使われ方である1名乗車時には不要な、オーバースペック的なメカニズムとなってしまうことも容易に想像できる。
「5人乗りの軽自動車があったらいいのに!」というユーザーが存在することは否定しないが、軽自動車規格の持続可能性や商品企画としてのバランスなどを考慮すると、軽自動車は最大4人乗りとしておくことが、いまの日本市場においては適切といえそうだ。
じつは、過去を振り返ると軽自動車(をベースとした登録車)において後席3人がけのクルマもあった。
それが三菱アイミーブをベースとした光岡・雷駆(ライク)で、後席の形状変更と中央席への2点式シートベルト追加によって、乗車定員5名を実現していたのだ。軽自動車のボディで5人乗りを実現した例はある。
そういえば、中国メーカーのBYDが日本専用に軽EVを開発中だという。もし、後席3人がけの5人乗りのモデルとして生まれたら、ユーザーの認識を変えるゲームチェンジャーとして軽自動車マーケットを大きく揺さぶるかもしれない。