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前はそんなことなかったのに最近エンジンオイルが減り気味……ってナゼ? 経年で発生する「オイル上がり」「オイル下がり」とは
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WEB CARTOP より

オイルの減りはエンジンの内部パーツが影響している


 寒い冬が終われば春が来て、学生は新学期、社会人は新年度が始まりますね。人もクルマも新たな気持ちでウキウキモード。「そうだ、愛車のオイル交換でもしよう!」なんて気持ちになってきます。

 そんなときにちょっとモヤッとした経験をした人はいないでしょうか? 自分でオイル交換をおこなう人で、「あれ? 以前は5リッター買って1リッター缶の半分くらい余ってたのに、ここ何回かはあんまり余らなくなってきたな……」というケースです。



 このオイルの消耗現象は、エンジンの内部パーツの摩耗が原因で起こっている問題かもしれません。

 今回はオイルが減ってしまう原因の代表例、「オイル下がり」と「オイル上がり」について話してみましょう。

■完調でもエンジンオイルはわずかずつ減っている

 エンジンオイルには、エンジン内部の金属パーツ同士の潤滑と冷却、そして燃焼や摩耗で生じるスラッジや鉄粉などをオイルフィルターに集めるという大事な役割があるというのは、このWEB CARTOPの読者ならご存じの人も多いでしょう。



 しかし、オイルはエンジンのなかに封入されているので、オイル漏れでもない限りはオイルが減るという発想を持っている人は少ないのではないでしょうか。

 ざっくりと見れば、エンジンが完調な状態ならオイルの減りはほとんどありません。しかし、厳密にはごくわずかずつエンジンオイルは減っているのです。

 たとえば、エンジン内ではピストンとシリンダー壁の間を潤滑するために常にオイルの薄い膜を作っています。
その膜が燃焼で混合気といっしょに燃えて、排気ガスとなって排出されているのです。
これがエンジンの各部でおこなわれているので、距離を走ればその分だけオイルはわずかに減っていきます。



 問題がなければ減る量は気になるレベルではありませんが、各部の摩耗が進むとその量がハッキリ認識できるレベルになってきます。

完璧な対処法はエンジンのオーバーホール以外はない


■オイルが減る原因「オイル上がり」と「オイル下がり」

<オイル上がり>

 上の例で出したピストンとシリンダー壁の潤滑では、燃焼室とクランク室はピストンに装着されているピストンリングで隔てられる構造です。



 そのピストンリングがシリンダー壁面に密着することで、高圧の燃焼ガスがクランク室に漏れないようにしながら、クランク室から飛び散ってシリンダー壁面に付着したオイルを、潤滑に必要な分だけ残して掻き落としています。

 ピストンリングやその相手側のシリンダー壁面が摩耗してクリアランスが増えたり、高熱や経年劣化によってリングの張力が落ちることで、ガスやオイルを隔て切れなくなってきます。



 このようにして、オイルが燃焼室に多く漏れ出て燃焼によって外に排出されてしまう症状のことを「オイル上がり」といいます。

 この「オイル上がり」の場合、通常の混合気にオイルという不純物が多く混ざるため、カーボンの発生が増えて黒い排気ガスが出るようになります。
カーボンは触媒やマフラーの内部に蓄積するので、アクセルを開けて回転が上がったときの排気ガスの勢いにそれが巻き込まれて「ボワッ」と黒煙を吹く現象が起こるのです。



<オイル下がり>

 一方、シリンダーヘッドでもっとも忙しなく動いているのがバルブです。バルブはエンジン回転の半分の回数だけ常に往復運動をおこなっています。アイドリングでも毎分500往復しているんです。



 それだけの回数往復運動をおこなっているバルブの軸=バルブステムの潤滑は、シリンダーヘッドに圧送されたオイルによっておこなわれています。カムから飛び散ったオイルがステムの軸に付着して、バルブステムを支えるバルブガイドとの隙間に染みこんで潤滑しています。

 この部分のオイルをせき止めているのはステムとガイドのクリアランス設定です。
適正ならごくわずかにオイルが染み出るクリアランスになっていますが、ガイドには比較的柔らかい金属が使われているので、長く使っていると摩耗してクリアランスが大きくなっていきます。



 クリアランスが大きくなるとオイルをせき止めるものはなくなってしまうため、吸排気ポートのなかにオイルが多く染み出すようになります。

 そのようにしてオイルがポートに染み出してしまう症状のことを「オイル下がり」といいます。

 この「オイル下がり」の影響は、吸気バルブから染み出した場合は燃焼室に吸い込まれ、オイル上がりと同じように黒煙の原因になりますが、アクセル開度が大きいときは燃焼室からの「吹き返し」によってオイルが吸気経路に霧散することもあります。
これはインジェクターの汚れや、エアフローメーターのセンサーの汚れなどにつながって、アイドリングの不調や加速不良を引き起こすこともあります。

 また、排気側で起こった場合は、オイルが燃焼せずに排気に混じるので、触媒に付着して還元作用を阻害したり、マフラー出口がべったりするようになります。オイル下がりの黒煙に対してこちらは白っぽいガスになります。



■「オイル下がり」と「オイル上がり」の対処法は?

 まず、冒頭で話したようにオイルが明らかに減っているなと感じたら、この「オイル下がり」または「オイル上がり」を警戒しましょう。

 排気ガスに関しては自分ではなかなか確認しづらいと思いますので、誰かに見てもらうなどしてチェックしましょう。

 症状の原因はリングやガイドの摩耗によるものなので、走行距離が少なく摩耗の可能性が低い場合は、オイル漏れなどほかの原因の可能性が高いのですが、10万キロを越えているようなケースでは、走り方によってはこの「オイル下がり」か「オイル上がり」の疑いが濃厚です。



 対処はオーバーホールしかありません。摩耗したピストンリングやバルブガイドを交換することが必須になるので、エンジンを分解しての交換作業になり、工賃もそれなりに高く付きます。
末永く乗るつもりならこの費用は覚悟しないとなりませんが、乗り換える場合はこれがそのきっかけになりますね。



 ちなみにオイルの添加剤でオイル漏れの低減効果を謳っている商品があります。確かにオイルの漏れは少なくなるかもしれません。しかし、各部の気密性が損なわれている状態のため、エンジンが本来の性能を発揮できていないという点については改善できません。

 あとどれくらい乗るかを見極めて、かけるコストを判断しましょう。



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