サンキューハザードは危険!?? ほんとはやっちゃいけない運転マナー3選
口コミを書く
口コミを見る
ベストカーWeb より
公道を走っているとさまざまな運転マナーに遭遇する。サンキューハザードなどがそうしたマナーだが、一般的になっているマナーも実は交通違反だったりする? 今回はそんなマナーについて考えていきたい。
文/長谷川 敦、写真/写真AC、Adobe Stock、アイキャッチ/Jorge Ferreiro@ Adobe Stock
お礼のハザードは道交法では×、それとも○?
たとえば側道から本線への合流時に、本線側のクルマが順番を譲ってくれたときにハザードランプを数回点滅させて感謝の意を示すのがいわゆるサンキューハザード。
1980年代に高速道路を走るトラックドライバーの間で始まり、現在では一般的なマナーとして乗用車間でも頻繁に使われている。
しかし、ご存じのとおり本来ハザードランプはお礼のあいさつのために使うものではない。基本的にはクルマにトラブルが起きて停車しているとき、あるいはレッカー車でけん引中に周囲にそれを知らせるためにハザードランプを点滅させる。
もうひとつのハザードランプを使う場面として、高速道路などで渋滞の最後尾に追いついた際に、後方を走るドライバーに減速を伝えるというのがある。
このようにハザードランプはいくつかの異なる目的のために使われているが、厳密にはサンキューハザードと渋滞最後尾のハザードは正しい使い方とはいえない。
ハザードランプに関する道路交通法を要約すると「夜間に5.5m以上の道幅の道路に停車・駐車する際には「非常点滅表示灯(ハザードランプ)」を点けなければいけない」になる。
つまり、ハザードランプは基本的に停車、あるいは駐車中に点滅させるものであり、走行中に点けることは想定されていない。
だからといってサンキューハザードを使用すると即道交法違反として検挙されるかというとそうともいえない。ハザードランプに関する規定はあくまで駐停車時のものであり、走行中の使用は想定されていないというのがその理由だ。
とはいえ、合法ともいいきれないのが悩ましいところ。渋滞の最後尾に追いついた際のハザードランプについて同様だが、こちらはむしろ使用を推奨する動きもある。
現状ではサンキューハザードもほぼ定着しているため、誤解を与えない状況であれば、違法という扱いにはならないだろう。
最近では後方のドライバーに感謝の意を表す「ありがとうランプ」も販売されている。道交法が気になる人は、後付けできるありがとうランプを使用するのもアリだ。
青信号のクラクションは慣らしちゃいけない?
クルマで信号待ちをしている際に、青になっても前方のクルマがスタートしないというケースはままある。そこで後方のクルマが前車のドライバーに気づいてもらうためにクラクションを鳴らすことがある。
実はコレも道交法では違法になる。クラクションの使用に関しては道交法で定められていて、使えるのは基本的に危険を知らせる、または回避するときのみ。
具体的には見通しの悪い交差点を通るとき、あるいは「警笛鳴らせ」の標識があるときなど。要するに、青信号を知らせるのにクラクションを鳴らすのは違法ということになる。
前方にクルマが割り込んだ際に、そのクルマのドライバーに不満を伝えるためにクラクションを鳴らすのももちろんダメ。道を譲ってもらったときに軽くクラクションを鳴らしてお礼するのもやはり法令違反だ。
これほどまでにクラクションの規制が厳しいのは、本当に危険な場合に警笛としてしっかり機能させるためである。
路上がクラクションの音であふれていると、どれが警告でどれが文句、またはお礼なのかわからなくなってしまう。実際、日本よりも頻繁にクラクションを鳴らす海外ではその問題も大きい。
青信号で前のクルマがスタートしなくてもクラクションを鳴らさずじっと待つ。これが法的には正しいあり方だ。
パッシングライトは誤解がいっぱい!
ヘッドライトを短時間に数回点滅させる行為をパッシングライトと呼び、道路上でのさまざまなコミュニケーションに使われている。
代表的なのが、右折待ちで対抗車が「お先にどうぞ」の意味で行うパッシングで、これに対して譲られたドライバーもパッシングでお礼の合図をするというもの。
クラクションを使ったお礼よりは周囲への影響も少なく、一見平和に思えるこのパッシングだが、これはあくまでお互いの意志の疎通ができている場合のこと。
そもそもパッシングライトの「パッシング」はパス、つまり追い抜きの意味で、高速道路などで後方がから迫るクルマが前走車に追い越しの意志を示すサインだ。
カーレースが好きな人なら、上位を走るクルマが周回遅れのマシンに対してパッシングライトを使っているシーンを見たことがあるはず。
このように本来は後方からの合図に使うパッシングライトがいつの間にかマナー道具のひとつになり、現在では広く用いられている。
しかし、ドライバーによってパッシングライトの解釈が違っていたらどうなるだろう?
先に紹介した右折待ちで、対向車のドライバーが追い越し時と同じ「自分が先に行く」の意味でパッシングライトを使った場合には、譲られたと思った右折車と対向車が同時に走り出して衝突、なんて事態にもなりかねない。
また、前方で速度取り締まりを行っているのを対向車のドライバーがパッシングライトで知らせてくれる場合もある。これを正直ありがたいと思う人も多いだろうが、やはり正しい使い方ではない。
地方によってもパッシングの使い方が違っているケースも多く、それによる誤解が事故の原因になる可能性も否定できない。
実際、筆者が助手席に乗っているときに同乗の運転手がパッシングをしたので、対向車を先に行かせるのかと思ったら、そのまま走り出して危うく対向車と接触しそうになったことがある。
運転手は「こっちがパッシングしたのに出てきた」と対向車に怒っていたが、これは解釈違いの際たる例だろう。ちなみに筆者と対向車は地元(ナンバーの地名から推測)で、同乗者は別の地方から来た人間だった。
今回は比較的メジャーな運転マナーを紹介したが、これら以外にもマナーはあり、それが人や地方によって異なる使い方をされているケースも少なくない。
定着しているマナーだからといって合法とはかぎらない。守るべきなのはあくまで道路交通法であり、そして徹底的な安全確認だ。とにかく安全第一の運転を心がけてほしい。