5000kmでオイル交換はもう古い!? 高いのを長く使うor安いオイルをちょこちょこ交換はどっちがいいんだ!?
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ベストカーWeb より
アナタはどのくらいの頻度で愛車のエンジンオイル交換を行っていますか? 今回は、安価なオイルを頻繁に変えるのがよいのか、それとも高級オイルを長期間使うのか? この永遠のテーマ(?)を考えたい。
文/長谷川 敦、写真/写真AC、Adobe Stock、アイキャッチ写真/artegorov3@Adobe Stock
なぜエンジンオイルが重要なのか?
最初にエンジンオイルの役割と、どうしてその交換が必要なのかをおさらいしていこう。
エンジンオイルはエンジン内部の潤滑に使用されている。数えきれないほどの可動部品で構成されるエンジンでは、それらの部品をスムーズに動かすための潤滑は必須。
そこで専用のオイルを使って潤滑を行うのだが、潤滑油を使用していても、エンジン内部の可動パーツは摩耗し、これがオイルに混入してしまう。
また燃焼しきれなかった燃料の燃えカスもエンジンオイルに混ざっていく。
不純物が混入したオイルの潤滑性能が本来のものより落ちていくのは想像にたやすい。そして高温にさらされたオイル自身の成分も変質し、これもまた性能低下につながる。
だからこそ、汚れたオイルを抜き取って、新たなオイルを入れることでリフレッシュを実施する。これがいわゆるオイル交換だ。
エンジンオイルは基本的に内燃エンジンに使用される。つまりガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどで、EV(電気自動車)の電動モーターにもオイルは使われているが、今回は除外する。
バイクや発電機などに使われる2サイクルエンジンにもオイルは使用されるが、この形式のエンジンでは、燃料にオイルを混ぜるため、エンジンオイルは燃料とともに燃やされる。
だから2サイクルエンジンではオイル交換が必要ない。
エンジンオイルの交換サイクルはどのくらい?
劣化したエンジンオイルの交換が必要なことはわかった。では、どの程度の頻度で交換すればよいのだろうか?
ベテランの読者なら、エンジンオイルの交換目安を「5000km走行、または半年ごと」と覚えている人もいるはず。
実際に現在でもこのサイクルでオイル交換を行っている人は多いだろう。しかし、現在の事情は少々変化していて、オイル交換のサイクルが延びているのだ。
まずはエンジン製造精度の進化だ。かつてのエンジンは各部品のはめ合いなどが甘く、オイルによる確実な潤滑が必要だった。
しかし、近年のエンジン製造技術は大きく進歩していて、部品がスムーズに動くことから以前よりもオイルの消費量が減り、不純物の混入も少なくなっている。
そしてオイル自体が進化しているのも見逃せない。以前のオイルは容器のフタを開けてオイルタンクに注いだ瞬間から酸化(=劣化)が始まり、それゆえに早めの交換を実施していた。
だが、現在のオイルは酸化しにくく、油膜切れも起こしにくくなっている。これも交換サイクルの延長に大きく貢献している。
つまり、「5000km、または半年」の交換目安は過去のものとなっている。
高いオイルと安いオイルは何が違う?
現実的なオイル交換サイクルを考える前に、今度はオイルの品質を見ていくことにしよう。
エンジンオイルのパッケージには「5W-30」などといった記載がある。これはオイルの粘度(硬さ)を表していて、オイル交換の際はこの数値をカバーしているものを選ぶ。
そしてクルマごとに推奨されるオイルのグレードがあり、そのグレード、またはそれより上のグレードのなかからオイルをセレクトすることになる。
もちろん価格の高いオイルのほうが品質も高いのはいうまでもない。
エンジンオイルに用いられるベースオイルには、大別して「全合成油」「部分合成油」「鉱物油」の3タイプがある。
このうち最も高品質なのが全合成油で、精製時に不純物が取り除かれ、潤滑性能が高いことに加えて劣化もしにくい。
価格が安いのが鉱物油だ。そのぶん全合成油よりも酸化が進みやすく、必然的に交換サイクルが短くなる。
部分合成油は全合成油と鉱物油を混ぜて“いいトコどり”をしたオイルで、価格や品質も両者の中間といったところ。
とはいえ、現在は合成油の低価格化などで需要が減ってきた鉱物油の価格が上昇傾向にあるという。
高級オイルの優れている点は潤滑姓能や耐久性など。オイルをグレードアップしただけでエンジンの吹け上がりが一気に良くなったという話も聞く。
そして高級オイルの難点は価格が高いこと。性能を考えれば当たり前の話だが、お財布事情によっては購入をためらってしまう場合もある。
低価格が魅力のオイルは、そのぶん性能が高級オイルに比べると低く、これは当然耐久性も含まれる。そのために交換サイクルは短くなる。
安いオイルを頻繁に変えるのと、高いオイルを長く使うのはどちらがお得?
さて、ここからいよいよ今回の記事の本題を考えていこう。
まずはエンジンをできるだけ長持ちさせたいという前提がある。そして究極の結論は高級オイルを適切なタイミングで交換することだ。
しかしそれはあくまで予算が潤沢にある場合の結論で、今回は経済性をメインに考えていきたい。
エンジンオイルの価格はそれこそピンからキリまである。だが、エンジンのことを考えると、最低でもメーカー指定グレード以上のオイルを選びたい。
カー用品ショップで量り売りされるプライベートブランドオイルの価格は1リッターあたり600円程度。これが高級オイルになると1リッター3000円を超えてくる。
仮に低価格オイルを半年ごとに交換した場合でも、高級オイルを1年使うよりは金額的には安く済む。
プライベートブランドのオイルといっても製造は大手石油会社に依頼しているケースも多く、大量発注や輸送コスト削減などを行って価格を下げているため、品質的には問題ない。
高級オイルの品質は申しぶんなく、新品状態で比較するなら、エンジンの吹け上がりの良さなどは明らかに低価格オイルを上回る。ただしそのぶんの対価を支払わなければならない。
ということで、低価格帯と高級品を比べてみると、どちらかというと安いオイルを頻繁に変えるほうがお得といえそうだ。
ここで見落としてしまいがちなのが、オイル交換には手間がかかるということ。ディーラーやカーショップに交換を以来するとオイル代の他に工賃も発生し、交換するための時間も必要。
カーショップへの移動も含めると、なんだかんだでオイル交換に半日を費やしてしまうことも珍しくない。
つまり安いオイルを頻繁に変えるということは、交換のためのコストが高級オイルよりも高くなることも意味している。
時間を直接お金に換算するのは難しいが、忙しい現代人にとってこの目に見えぬコストの問題は無視できない。
これらのことを考慮すると、単純に安いオイルをマメに交換するのがお得ともいいきれない。
オイルのグレードと交換頻度の損得についていまだに明確な結論が出ていないのには、こうした複雑な事情がある。
支出を抑えたいなら安価なオイルを短いサイクルで変更し、性能優先でなおかつ交換頻度を少なくしたいというのであれば、高級オイルを長期間使用するといった方法を選ぶのがよいだろう。