走行中にタイヤが外れる!? 恐ろしい「脱輪事故」なぜ起きる? タイヤ交換時にやってはいけないNG行為とは?
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くるまのニュース より
「左側のタイヤ」の外れやすさには日本の道路事情が影響している!?
2023年11月に北海道で脱輪事故が発生したことは記憶に新しいかと思います。
ニュース映像で確認する限り、脱輪したクルマは「ハイリフト」カスタムが施されたスズキ「ジムニー」。左側の前輪が脱輪し坂を転がり、歩行者に当たってしまったというものでした。
そもそも、なぜタイヤが外れる事故が発生するのでしょうか。
この北海道の脱輪事故に限らず、ほかにも今冬に起きた脱輪事故は複数あり、その多くは左側のタイヤが脱輪しています。
整備士のT氏に話を聞くと、日本の道路の構造が事故に影響を与えている可能性があるといいます。
「日本の道路は脇に設置した排水溝に水を流すため、緩やかな『カマボコ型』になっています。つまり直進していても、実際は左側のタイヤにずっと負荷をかけて走っている状態なのです。
この微妙に斜めになっている道路を走り続けることで、左側のホイールナットに緩みが生じやすくなり、結果として左側のタイヤが外れやすくなるとされています」
なお、乗用車はフロントにエンジンを搭載することが多いので左側前輪、トラックなどは荷台に重い積載物を搭載するため左側後輪にもっとも負荷がかかってしまうとのこと。
結果として左側のタイヤ外側に負荷がかかって偏摩耗もしやすくなり、段差などの衝撃で緩くなったナット部分が外れて脱輪にまで至った可能性が否定できないといいます。
タイヤ交換時にやってはいけないこととは?
左側にやや傾いている日本の道路を走行する以上、誰でも脱輪する可能性があるといえます。ただし、北海道の事故ではそれ以上に根本的な部分で問題があった可能性をT整備士は指摘します。
「推測はあるものの、一番の原因はナットにあったのではと考えられ、ナットの取り付け面がホイールの形状にマッチしていなかった可能性もありそうです。
社外ホイールへの交換などでよく起こる事例なのですが、たとえば純正ホイールに使用するナットの取り付け面が微妙に球面状になっていることがあります。
または純正ホイール側が微妙に曲線の場合もあり、つまりネジのオスとメスの関係で、ホイールハブとナットの接点が合っていないと、そこから緩み出してしまうのです。
よく社外ホイールに交換する場合、適正トルクで締めているか『トルク管理』にこだわることは多いのですが、それ以前にナットの形状がしっかり適合しているかを確認する必要があります」(T整備士)
では、タイヤの脱輪を予防するにはどうしたら良いのでしょうか。
「まずは、使用するナットとホイールの形状が適合しているかを確認してください。
特にスタッドレスタイヤへの交換時や社外ホールの装着などでは、ナットの径が同じで締まるということだけでなく、面同士がしっかり合っているかのチェックをしてほしいです」(T整備士)
ナットの締め方にも注意が必要です。自分でタイヤ交換する場合、1つずつジャッキアップすると思いますが、ナットを締める前にタイヤが地面に接触していると微妙に角度がついたまま取り付けてしまうことになります。これは整備初心者にありがちなミスでもあります。
「締め方にもポイントがあり、1つのナットを最初に締め上げるのではなく、均等かつ徐々に締める必要があります。
この手順を守らないと微妙に角度がついてしまい、偏摩耗や脱輪の危険性が高くなるので注意しましょう」(T整備士)
自分で作業できないという人は販売店やガソリンスタンド、カー用品店などにタイヤ交換を依頼することになりますが、プロだからと信用して任せたつもりが、雑に扱われて傾いた状態で取り付けられてしまうことも無きにしも非ずだといいます。
「雑に取り付けられてしまうと、ネジ山をなめてしまったり、取り外しづらくなってしまうこともあります。
タイヤ交換直後は真っ直ぐ走れるか実際に走行して、ハンドルが取られるかなどを確認してほしいです」(T整備士)
また、装着後に高速巡航を少し試してみたほうが良いとT整備士はいいます。というのも、高速巡行によってホイールやナットが熱膨張し、その後冷えることで緩みが発生することもあるからなのだそうです。
「高速道路を少し走ったのちに改めて適正トルクで締め直すことで、より外れにくくなると思います。
よく『高速道路を走る前には空気圧とナットの締め具合の確認を』と言われるのは、この熱膨張の影響を考慮する必要があるからなのです」
※ ※ ※
冬の時期はスタッドレスタイヤを履いたり、春になったらノーマルタイヤに戻すなど、タイヤの取り外しが増えるタイミングです。
無事に交換できたと安心せず、今一度ナットの締め具合をチェックすることで、脱輪事故が予防できるのではないでしょうか。