花粉のシミ落としは待った方がラク!? 春の汚れは夏に消えてなくなるかも?
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ベストカーWeb より

花粉の舞う時期になり、クルマは何度洗っても黄色い状態。ボディに付着した花粉は、洗車の仕方や取り除き方を間違うと、大切な愛車が傷だらけやシミだらけになってしまうことも。花粉汚れは無理せず夏まで待つと、綺麗に除去できるって本当? 花粉で汚れたクルマの洗い方、お教えしましょう。
文:佐々木 亘/画像:Adobe Stock(トビラ写真=Jaroslav Moravcik)
深追いしないのが花粉との付き合い方
筆者がディーラーで営業マンをやっていたころ、春先の新車納車時には、非常に気を遣った。花粉や黄砂で、新車はあっという間に黄色く汚れ、傷がつき、シミだらけになってしまうからだ。
特に黒や紺などの濃いボディカラーのクルマが来た時には、毎日のように手洗い洗車していたことを思い出す。花粉対策の第一歩は、「花粉が付いたら、まず洗う」ということに尽きるだろう。
ただ、毎日クルマを洗うことは、カーディーラーかガソリンスタンドに勤めていないと無理なお話。しかしながら、花粉がボディにこびりつく前に除去できれば、埃などと同じように流して拭き取るだけでキレイになることは覚えておいてほしい。
そして厄介なのは、シミになってしまった花粉汚れ。
花粉は浮遊している時には殻に守られているが、この殻は水に濡れることで破れてしまう。すると花粉の中からペクチンというたんぱく質が出てきて、これが塗装の組織の中に浸潤していき、塗装の内部から組織を収縮させる働きをする。
こうなってしまうと、カーシャンプーで洗おうが、マイクロファイバークロスで擦ろうが、花粉のシミは取れない。
この状態になった後に、花粉をこすり落とそうと深追いしてしまうと、洗車クロスや拭きあげクロスなどでボディを強くこすることになり、ボディに細かな線キズが残ってしまう。シミになった花粉は深追いしてはいけない。
花粉のシミは熱で落とす
花粉は簡単にシミになり、一旦シミになってしまった場合、シャンプーや研磨では落とせない。研磨を行うと一時的に改善したように見えるが、塗装内部に残ったペクチンが再び収縮を始めるために、またシミが生成される。
根本的な解決にはならないので、コンパウンドで磨くという対処も、花粉のシミにはNG。
ではどうすればいいのか。その解決方法は、花粉に対して「熱」を加えることにある。シミを作る原因のペクチンは60℃以上に加熱すると分解されるため、塗装の中で収縮する力を失い、シミが消えていく。
最もお手軽なのは、ボディにお湯をかけるというもの。軽度のシミなら50℃くらい、完全なシミなら70℃から80℃くらいのお湯をボディに直接かけていく。火傷に注意しながら、クロスでお湯を拭き取れば、花粉シミは消えているはずだ。
決して力強く擦ったり、何度もゴシゴシとクロスを往復させたりしないように、優しく水分を拭き取ろう。
注意してほしいのは、熱を加えるためにヒートガンなどは使わないこと。熱が高すぎて、塗装にダメージを与えるまで温度が上がってしまう可能性がある。また、スチームクリーナーの使用も避けてほしい。スチーム噴出口に巻き付けたクロスの跡が、塗装面に移ってしまうことがあるためだ。
なお、花粉のシミに対しては、ボディコーティングがあまり効果を発揮しない。それは、花粉がコーティングや塗装の中に入り込んでしまうからだ。熱湯でも取れない、もしくはシミが多すぎて熱湯をかけるのも大変という場合は、春の間のシミ除去はスパッと諦めよう。
ボディが勝手に熱くなる夏になれば花粉シミは勝手に消える
春先に付着してしまい、シミになった花粉がとれない時には、無理に除去せず、夏まで待つのが得策だ。新たなシミを作らないように、こまめに洗車を行いつつ、花粉シミは夏の直射日光の熱でペクチンが分解されるまで待つという方法が、最も効果的で効率的な花粉シミ対策だと思われる。
花粉は特別なケミカルを使わずに落とす事ができる汚れだ。花粉除去でつけた傷はずっと残るが、花粉シミは夏を超えれば消えると覚えておけば、無理な洗車で大切なクルマを傷つけることも無いだろう。
正しい知識と対処法が分かっていれば、花粉汚れや花粉のシミも怖くはない。