自動車カタログのなかでも「超マニアック」な表記! 誰も見ない気がするけど「変速比」って何のために書いてある?
口コミを書く
口コミを見る
WEB CARTOP より

カタログ内にある不要に思える数値の正体
昔はほしいクルマがある場合、ディーラーに行ってその車種のカタログをもらって、その内容を見てじっくりと購入を検討したものですが、いまはディーラーに足を運ばなくても、webサイトでカタログの情報を見ることが出来ますので、自宅にいながら、気になる複数の車種の情報を比較して検討することができるようになりました。
そのカタログの情報には、色や価格、装備などのほかに、車体の寸法やエンジンのタイプ、サスペンション形式などさまざまな情報が掲載されています。車両のサイズは駐車場に収まるかどうかで重要ですし、いまのご時世なら燃費の項目を真っ先に見るという人も少なくないでしょう。
このように、重要とされる項目は世相によって変化していますが、「仕様・諸元」の項目はあまり変化していないように感じます。
その項目のひとつに、「変速比」というトランスミッションのそれぞれのギヤ比を記した部分があります。
1980年代の中期頃まではMTの比率が半数以上だったので、その数値の掲載には意味があったと思いますが、オートマチック全盛のいま、気にする人がどれだけいるのだろうか? と疑問に思ってしまいます。
ここでは、その諸元の「変速比」の掲載について、少し掘り下げてみようと思います。
■変速比とは何の数値?
「変速比」というのは、エンジンの回転数と車輪の回転数を適正にするために設定されているギヤ比のことです。エンジンの特性や、車両の重さ、使用目的などに応じて細かく設定されています。
なので、レースなどといった、運転の精度を高めないと勝てないようなシーンでは、その数値を把握することが重要ということはわかります。また、MT(マニュアルトランスミッション)がまだ多数だった時代は、一般のドライブシーンでも、スムースな運転を意識する人にとっては意外と重要な数値でした。
たとえば山道を走っているとき、「このクルマは2速と3速のギヤ比の差が大きいから、できるだけ2速で回転を上げないと3速でもたつくな」というような感じで、変速比を考え、運転の仕方を工夫して、スムースな加速を実現していました。
変速比を見てわかることとは
■AT全盛のこのご時世に「変速比」の掲載は必要か?
このように、MTの比率が高かった時代は「変速比」を気にしている人も一定数いたことと思いますが、新車登録台数でMTの比率が1〜2%前後となってしまったいま、その数値を掲載する意味に疑問を感じてしまいます。
その疑問を、自動車メーカーのなかでもトランスミッションへのこだわりが深いと評判の「スバル」にぶつけてみました。みなさんご存じのように、スバル車はかつてのWRCでの活躍が印象に残っているように、スポーツ性能の高さや悪路&雪道の走破性の高さに優れると高い評価を受けています。
返答としては、「スバル車を求めるユーザーはドライビングに対する意識が高い人が多く、運転技術の向上や、愛車をうまく使いこなすことに情熱を傾ける、いわゆるマニアックな人に支えられているという傾向があるため、『変速比』というクルマを操るために重要なデータの提供は必要です」とありました。
マニア度が高い人なら、その変速比の構成を見るだけで、「今回のニューモデルはギヤ同士がそれほどクロスしていないから、トルク特性が広くなっているかもしれないな……」なんていう想像を楽しめたりするわけです。
では、一般的なトルコン式のATや、スバルが得意としているCVTなどの自動変速タイプのトランスミッションで「変速比」の掲載は必要でしょうか?
とくにCVTは無段変速機構のためギヤというものがなく、段ごとの「変速比」を掲載する意味がないように感じます。
これについては、“マニュアルモード付き”とそうでない標準タイプで異なるそうです。
標準タイプでは、速度やエンジンの回転数などに応じてECUが適切なギヤ比を無段階のなかから選び出してくれる仕組みのため、実際には段自体がありません。そのため、諸元上では「3.327~0.628」のように、変速比の範囲だけが掲載されています。
一方で、マニュアルモード付きの場合は、標準タイプと同じ範囲表記に添えて、1〜8速など設定された段数ごとの変速比(※代表的な数値)が表記されています。
これはMTの場合と同様に、その変速比の設定を見て「段を上げていくごとに高回転を楽しむような設定になっているのか」というように、設計の意図を汲み取って「ニヤリ」とできる材料という意味もあるとのこと。
ちなみに「※代表的な数値」というのは、あくまでも“基本設定値”ということで、エンジンや車両の状況に応じて細かく調整が入るようです。
このように、スバルではユーザーの求めに応じる形で今後も、「変速比」の掲載は残していくようですが、業界全体では、メーカーごとの考え方の違いで、今後は掲載されなくなっていくのかもしれません。