純EVに必要なのは「心の余裕」ってマジか…急速充電器がスペック通りに充電できない必然的な事情
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ベストカーWeb より
先日、スバル「ソルテラ」/トヨタ「bZ4X」に試乗した際、試乗の途中で、30kW急速充電器で30分間の充電をしました。
計算では、30kW×0.5h=15kWは蓄えられるはずですが、回復したのは13.3kWh(距離に直すと約93km程度(電費は7.0km/kWhで算出))でした。
このように、高速道路のPAやSA、ショッピングセンターなどに設置されている、電気自動車(以下、BEV)用の急速充電器では、通常、充電器のスペック(出力)通りに充電できません。
なぜ充電器のスペック通りに充電されないのでしょうか。
文:Mr.ソラン、吉川賢一
アイキャッチ写真:写真AC_ Moca0413
写真:写真AC、イラスト:著者作成
普通充電の10倍以上供給可能な急速充電
BEVの充電には、普通充電と急速充電の2種類の充電パターンがあり、現在日本で市販されているほとんどのBEVには、普通充電用とチャデモ規格に準じた急速充電用の2つの充電口が装備されています。
普通充電とは、交流の100Vおよび200Vで充電する方法。一般家庭や設置される充電器はこの普通充電です。
一方の急速充電は、直流300V~400Vの高出力充電器を使って充電する方法で、冒頭でふれた、高速道路のPAやSA、ショッピングセンター、ディーラーなどに設置されている充電器が、この急速充電です。
200V普通充電の公称出力(充電電力)は3.0kWなので、充電電流として15A(3000W/200V)が流れます。
急速充電の出力は、20/30/40/50/90kWの仕様がありますが、充電電流100A以上を流す50kW仕様が一般的。
以上のことから、200V普通充電器(出力3.0kW)ならば1時間で3.0kwh、急速充電器(出力50kW)ならば1時間で50kWhの電力を充電する能力がある、ということになります(ただし、国内の急速充電器のほとんどは、1回30分と決められており、満充電でなくても30分で充電が停止するように設定されているため、50kWhの急速充電器での1回の充電可能な電力は25kWhとなります)。
となると、例えば日産リーフのバッテリー(容量40kWh)を充電する場合、200V普通充電では12.5時間(40/3.0)、50kW出力の急速充電器では48分(40/50)かかることになります。
ただ、これは最初から最後までスペック通りの公称電圧、電流で充電する場合の理論的な値であり、実際には、バッテリーを保護するために、後述する充電制御が組み込まれているので、もっと時間がかかります。
過充電リスクを抑えるための充電制御
リチウムイオン電池は、充電方法を誤る、特に過充電になると、発火や爆発などの事故を起こす恐れがあります。
充電電流が小さい普通充電は、充電に時間はかかりますが過充電のリスクは小さく、バッテリーの劣化も抑えられますが、大電流が流れる急速充電は、過充電で発熱反応が起こり、この発熱がセルからセルへと連鎖的に伝わり、最悪のケースでは熱暴走して発火に至ります。
バッテリー温度が高まると、そのリスクはさらに上昇します。
そのため、急速充電ではクルマ側にバッテリーを管理するBMS(バッテリー・マネージメントシステム)が装備されています。
BMSは、バッテリー各セルの電流と電圧、温度をモニターして、充電率や充放電許容電力を推定して充放電制御を管理します。
車両側のBMSから、通信によって充電器側に適切な充放電パターンを指示するのです。
バッテリー保護や充電効率の観点から80%が望ましい
急速充電の制御は、メーカーやBEVの仕様などによって異なりますが、バッテリーの充電率がおおよそ70%~80%を超えた時点で、充電電流を急減させるのが一般的です。
充電電流が低下すると、普通充電と同じようにゆっくりとした充電に切り替わります。
基本的な充電制御は、以下のような定電流制御と定電圧制御を組み合わせます。
・充電開始時は、主にバッテリー残存容量とバッテリー温度で決まる充電電圧と充電電流でスタートし、一定電流で徐々に充電電圧を上げていきます(定電流制御)
・バッテリー容量が70%~80%あたりまで上昇したら、バッテリー保護のため充電電圧を一定して充電電流を急減させます(電圧一定)
この定電流・定電圧制御によって、急速充電では充電率が70%~80%を超えると、充電が進まなくなるのです。
この特性を考慮して、メーカーが提示する急速充電時間は、通常80%充電までの時間であり、バッテリー保護と充電効率のために、フル充電するのでなく80%充電を推奨しています。
急速充電でも、BMSでバッテリーの上限充電率のクリップが設定されていない場合は、80%を超えても引き続き時間をかけて充電を続ければ、100%近くまで充電することは可能です。
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以上のようにバッテリー保護の観点から、バッテリーの充電容量が70%~80%以上になると、充電スペックとの乖離が大きくなり、期待通り充電できなくなります。
また高い充電率でなくても、暑い日などバッテリー温度が高くなるような条件では、バッテリー保護のために充電電流を下げるため、充電は抑えられます。
スペックあるいは公称値とは、ある決められた条件で計測した値であり、通常はその実力を最大限発揮できる環境での値を示します。
実際の使用条件ではそれと同等の実力を発揮するのは困難であり、しかたのないことといえます。
BEVは電池容量を30%~70%で充電を繰り返すことが、バッテリーの劣化抑制や保護につながります。
BEVでのカーライフでは、一気に満タンにして先を急ごうとするのではなく、乗員もクルマもこまめに休憩する「心の余裕」が求められるのです。
引用元:https://bestcarweb.jp/feature/column/461528