歩行者が強すぎる!? 渡らない…でも止まれ! 横断歩道の「止まらなきゃ違反」ホントの話
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ベストカーWeb より

信号機のない横断歩道を横断しようとしている歩行者がいるのに、クルマやバイクが先に横断歩道を通過しようとするのは道路交通法違反……ということは知っているはず。では、何がなんででも止まらないとダメなの??
文/山口卓也、写真/写真AC
クルマ対歩行者では、正確な意思の疎通を図ることは難しい
道路交通法 第38条では、「信号機のない横断歩道に歩行者や自転車がいる場合は横断歩道の直前、停止線が設けられているときは停止線の直前で一時停止して、その通行を妨げないようにする。そこに歩行者や自転車がいないことが明らかな場合は、そのまま進んでよい」となっている。
まず、この「明らかな場合」の判断が難しい。
筆者の住むエリアの駅前には、信号機のない横断歩道が多くあり、夕方にはその道が結構な交通渋滞になっている。
渋滞していると、トラックや車高の高いワンボックスカーなどにより、横断歩道を渡ろうとしている歩行者や自転車がまったく見えず、「まさかそこにいないよね……?」と思いながら減速し、いつでもブレーキを踏んで止まれる速度で横断歩道を通過している。
そうすると、やっぱりそこには歩行者や自転車がいたりいなかったりするのだ。そう、パッと見は「いない」のだけど、明らかではない場合も多い。渋滞しておらず横断歩道の端から端まで見通せる場合を除いて、「明らかな場合」にはならないと考えたい。
さらに難しい……と感じるのは、
1.歩行者や自転車がいることはいるが、渡る意思があるのかどうかがわからない場合。
2.渡る意思はあるようだけど、「どうぞどうぞ!」と譲られた場合に、クルマは発進してもよいのか? ということ。
「1」では、クルマのフロントウィンドウやサイドウィンドウ越しでは、歩行者による明確な「渡りません!」という意思がドライバーに正確に伝わりにくく、ドライバー側の「渡らないなら進みますよ〜」の意思も歩行者に正確に伝わりにくいと思う。
よって、「渡らない感じだな……」と思ったとしても、事故防止を考えて一時停止を継続すべきだろう。それがたとえ、スマホを見ながら立っている歩行者であったとしても。
そして「2」の「どうぞどうぞ!」と譲られた場合。
以前、歩行者に譲られて横断歩道を進行したドライバーが、その場にいた警察官による取り締まりを受けた。だが、それに納得がいかなかった同ドライバーは弁護士を通して管轄の警察署長にドライブレコーダーの映像を提出。その後に処分が撤回されたことがあった。
これはかなり話題となり、「歩行者に譲られて横断歩道を進行しても、取り締まりを受けるらしい」という認識をドライバーに持たせることとなった。
筆者も、歩みのゆっくりな人に「どうぞ!」と譲られたことが何度かある。以前までは一時停止して「いえいえ、どうぞ!」とわざわざサイドウィンドウを開けてジェスチャーをし、かたくなに先行させようとしていた。
しかし、なかには「急かされて渡るより、クルマが通過した後でゆっくり渡りたい」という人もいることを理解し、2度「いえいえ、どうぞ!」をしても渡ろうとしない歩行者には、サイドウィンドウを開けて「ありがとう!」のジェスチャーをし、自身が進むことを明確に伝え、さらに他の歩行者がいないかどうかを確認してから進むようにしている。
これで取り締まりを受けたなら、譲ってくれた歩行者の元に「渡らない意思」があったことを確認するために走るつもりだ。
ちょっと戸惑う、“自転車”の場合
自転車横断帯がなく、自転車に乗ったままの状態での自転車は“軽車両”扱いとなるので、クルマが道を譲らなくともただちに違反とはならない。
言うまでもなく、自転車は乗った状態では軽車両、降りると歩行者とみなされ、オートバイであってもエンジンをかけずに押して歩いている場合は歩行者とみなされる。
しかし、この「自転車に乗った状態では軽車両、降りると歩行者とみなされる」ということを知らない大人も非常に多く、当然のように横断歩道へ乗ったまま突っ込んでくる人も。
また、自転車に乗った子どもなどは急に飛び出してくる可能性もある。
よって、「事故を起こさない」という意味では、相手がたとえ自転車に乗ったままの“軽車両”であっても、私たちドライバーは「相手は歩行者同然」と考え、一時停止をするのが無難だと思うのだ。
ちなみに自転車の交通違反に関しては、来年4月から反則金の納付を通告する「青切符」による取り締まり(16歳以上を対象)が開始されるが、だからといってすべての自転車利用者が交通ルールを守るようになるわけではない。
交通弱者である歩行者が過失100となる場合も
夜間、片側3車線の国道の中央分離帯から反対側へ渡ろうとした歩行者が、その横断中にクルマにはねられる事故が起こった。
片側3車線の国道で直進車と衝突した歩行者は、100日以上の入院を含む2年もの間治療を行い、後遺障害の認定も受けていた。
しかし保険会社の示談交渉で提示された賠償額に納得できなかった歩行者とその家族が裁判を提起し、ドライバー側も弁護士をつけて裁判へ。
ドライバー側はこの事故を回避することは不可能であったことを主張し、結果、裁判所はドライバーの過失をまったく認めない「過失はすべて歩行者にある」という判決を下した。
このことは、交通弱者だからといって交通ルールを守らない歩行者の行為は重大な過失とみなされることを明確に示した。
ドライバーとして「やるべきこと」は何か?
道路交通法は、道路を利用するすべての人が守らなければならないルールを定めた法律。
免許の必要なクルマやオートバイはもちろん、免許のいらない自転車(時に軽車両、時に歩行者)、そして歩行者にも道路交通法の規制は及んでいる。
よって、道路交通法に照らし合わせて判断することは大事だが、「どうすれば安全か?」は常に考えて行動したい。