教習所で習ったけど…まだ使える技術なの?「ポンピングブレーキ」の賛否
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ベストカーWeb より

クルマを運転中、減速もしくは停止をする際に、フットブレーキを複数回にわけて踏む「ポンピングブレーキ」。足踏み式のポンプのように踏んだり離したりすることでこう呼ばれ、いまも自動車教習所の教本によっては、ブレーキは複数回に分けて踏むようにとの記述があるようです。
ただ、ポンピングブレーキに関しては、「何回もブレーキを踏むことでブレーキランプがチカチカしてうざい」や「時代遅れ」といった指摘も。はたしてポンピングブレーキは、令和のいまでも必要な技術なのでしょうか。
文:吉川賢一/アイキャッチ画像:Adobe Stock_tarou230/写真:Adobe Stock、写真AC
かつては重要な運転技術だった
もともとは、ブレーキング時にタイヤがロックするのを防ぐ、または、タイヤのロックを解いて制動距離を縮め、回避行動をとりやすくするためのテクニックであったポンピングブレーキ。ABSが普及していなかった時代においては重要だった運転技術です。
ABSがなかった時代のクルマは、雪道や雨などの滑りやすい路面でブレーキングをしてもタイヤが路面にグリップせず、そのまま滑って行ってしまうことがあり、ポンピングブレーキはそうした事態を避けるため、ブレーキペダルを踏みこんだあとにタイヤが滑り始めそうに感じたらペダルをほんの少しだけ緩め、その動作を繰り返し行ってクルマを停止させるというものでした。
ただ令和のクルマには必要のない技術
ただ、滑りやすい路面でのタイヤのロックを防ぐという意味では、2010年からABS(アンチロックブレーキシステム)の搭載が義務化されている昨今のクルマでは、ドライバーがあえてする必要はありません。
ABSは、制動距離を短くし、ハンドルによる緊急回避行動がとれるよう、タイヤロックを検知してブレーキ液圧をコントロールするシステム。要は、ポンピングブレーキと同じ動作をクルマがうまいことやってくれるシステムであり、ドライバーがやるよりもずっと確実に、そして短い制動距離で済むよう、ち密に制御してくれます。そのため、本来の意味でのポンピングブレーキは、令和のクルマには必要のない運転技術といえます。
ちなみに、「ABSを作動させるよりも、自分でポンピングブレーキをしたほうが、制動距離が短くなる」という人がいますが、それはその人のブレーキングが上手なだけ。確かに「舵の効き」を優先するABS作動よりも、上手なブレーキ操作ができるドライバーのブレーキ操作のほうが、(直進ならば)制動距離を短くできる可能性はありますが、緊急時に落ち着いてそれができるドライバーは少ないでしょう。一般的なドライバーさんは緊急時には思いっきりブレーキを踏み、ABSに任せたほうが確実です。
後続車に注意を促したいときだけにすればよいのでは
ただ昨今は、後続車に制動を知らせる、という意味で、ポンピングブレーキは必要だとされています。現在渋滞末尾などでは、ハザードランプを点滅させることがスタンダードとなっていますが、渋滞まではしていない場合には、ポンピングブレーキを使用することで、後続車に「あれ?」と思わせることができます。
運転中は周囲のクルマと会話したり、身振り手振りでコミュニケーションをとることができません。「後ろに伝える」ことは、事故に巻き込まれるのを防ぐために、とても重要なことです。前述した「何回もブレーキランプ点灯されるとウザイ」というのは、「自車を意識させる」という意味で、まさにそれが効いている証でしょう。
ただ、制動のたびにポンピングブレーキをする必要はないと考えます。高速道路を走行中など、安定した速度で走行中に急に前が詰まってきたようなときなど、ハザードランプを使うほどでもないけど、後続車に注意を促したい、というときにだけ使用すればよいのではないでしょうか。
一般的なドライバーにとって重要なのは、「複数回にわけてブレーキを踏む技術」というよりも、むしろ「必要な時に思いきりブレーキを強く踏み続ける技術」です。教習所を卒業以来、フルブレーキを体験した人は案外少ないはず。いざという時に躊躇なくブレーキを床まで踏み抜くには普段の訓練が大切です。できればサーキットなどで定期的に実施されている安全運転講習会などで、自分のクルマで(←ここ重要)フルブレーキを体験しておきましょう。「その時」、クルマがどういう挙動を示すかを知っておくのはとても重要です。