愛車のエンジンが最悪ブロー!?? エンジンオイルをずっと換えずにいたらどうなる?
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ベストカーWeb より
もしエンジンオイルを交換しなかったら、クルマはどうなる? と思ったことはないだろうか。
そこで今回は、エンジンオイル交換の大切さと交換しなかった場合に起きる最悪の展開について、解説。
文/高根英幸、アイキャッチ写真/doucefleur-stock.adobe.com、写真/TOYOTA、AdobeStock
■エンジンオイルの交換を忘れてしまったらどうなる?
エンジンオイルは交換することが必要であることは、ほとんどのドライバーが知っているハズだ。しかし、まれに日本でもオイル交換をしないままクルマを乗り続けてしまうドライバーもいる。
海外、取り分け北米ではオイル交換をせず継ぎ足すだけで乗り続けてしまうような使われ方が珍しくない時期もあった。
だからアメリカンV8などは、ルーズなメンテナンスでも壊れないようタフな作りに仕立てられていたのだ。
けれども、タフなアメリカンV8でも、オイルを継ぎ足すだけで走り続ければ、寿命は縮まる。
インターネットによる情報の浸透でオイル交換の必要性は充分に伝わっており、最近はそんなドライバーは減っていると思われる。
それでもメンテナンスフリー化が進んでオイル交換のサイクルも長くなっていることから、忘れてしまうドライバーもいるのか、いまだに衝撃的なケースがネットで取り上げられることもあるのだ。
■エンジンブローが起きる可能性も!? オイルの汚れと量の確認は大事!!
エンジンオイルはエンジン内部で発生するさまざまな汚れや不純物を吸収して、分解してオイル内部に溜め込む機能がある。
これを清浄・分散性というが、汚れを吸収していけば当然のようにオイルの性能は低下していく。
清浄・分散以外のオイルの性能とは潤滑と冷却が大きな役割だ。潤滑では油膜面にかかる圧力を受け止めるため、衝撃の吸収も行うので静粛性や振動の吸収にも寄与する。
これらの性能が低下していったら、エンジン内部はどうなるだろう。
通常のエンジンオイル交換サイクルでも、エンジン内部の摩耗は避けることはできない。
であれば無交換となれば摩耗がさらに進んでしまうことは想像できる。
またエンジンオイルはエンジンの燃焼によって少しずつ減っていく。
最近のクルマはオイル交換の標準サイクルが1万km毎あたりが普通なので、2倍の2万kmくらい走行しても、即壊れることはまずない。
しかし、オイル量が減った状態で走っていて、高速道路など大きなカーブを長く回るような状況が続くと、エンジン内のオイルが偏ってオイルポンプがオイルを吸えなくなるような状況が起こる。
そうすると、潤滑不良によりエンジンは極端に寿命が短くなる。状況によっては即ブローすることもあり得る。
エンジンオイルは汚れだけでなく、量も重要なのだ。月に一度とは言わないが、オイル交換を半年に一度行うのであれば、その中間時期にはオイルの量と汚れをチェックして、減っているようなら継ぎ足しておきたい。
■エンジン内部の摩耗が進んで10万km持たずにガタガタになることも!
エンジン内部にはさまざまな金属素材が使われているが、最も柔らかいのが錫をメインとしたメタルベアリングで、逆に一番硬いのはピストンリングやシリンダーライナー(アルミ合金エンジンのシリンダーに組み込まれる筒)、カムシャフトやギアなどに使われる鋼だ。
錫は柔らかいので、摩耗によって発生した金属粉も他の金属部品に影響を与えることは(比較的)少ない。だが鋼は別だ。
硬い金属粉は攻撃性も高く、摩耗粉がエンジン内部を循環することで更なる摩耗を引き起こす。
オイルフィルターがそうした摩耗粉をキャッチしてくれるので大丈夫じゃないか、という意見もあるだろう。しかし2つの理由で、そうした前提は崩れてしまうのだ。
■オイルフィルターにも限界があるって本当?
まずオイルフィルターに採用されているろ紙は、そのろ過性能にも限界がある。一般的なろ紙のメッシュは30ミクロン程度と言われている。
つまりそれ以下の金属粉であれば理論上はフィルターを通過して、エンジン内部を循環してしまう訳だ。
さらにフィルターにかかる圧力が規定以上であれば、バイパスバルブが開いてフィルターを介さずにオイルは循環する。
「おいおい、そりゃないだろう? 何のためのフィルターだよ!」思うユーザーもいるかもしれない。
けれどもこのバイパスバルブはフィルターを守るために組み込まれているのであり、フィルターがもし破れれば常にオイルはろ過されずに循環されることになるのだから、バイパスバルブの存在は重要だ。
通常であればバイパスバルブは冷間時にのみ開くことになり、大きな摩耗粉が循環することは限定的になる。
しかしオイル交換を怠れば、話は別だ。オイルフィルターのろ紙がスラッジ(オイル内の老廃物で詳しくは後述)で目詰まりしていると、バイパスバルブが開きっぱなしになって、汚れたオイルはろ過されずに循環することになってしまう。
そうなるとエンジン部品の摩耗によって発生した金属粉が部品間を循環して、それがまた摩耗の原因になってしまう。
すると摩耗の進行速度は加速度的に高まっていくことになるのだ。
■スラッジの堆積が酷くなると思わぬトラブルを引き起こす!
汚れたオイルやオイルフィルターを使い続けると、摩耗が進んでしまうことは説明したが、それだけではなくオイル自身の劣化による他の影響も見過ごせない。
現代のエンジンオイルは冷間時から高温時まで安定した潤滑ができるように粘度が広範囲に安定するマルチグレードオイルを使っている。
さらに摩擦を軽減させたり、前述の清浄・分散性を確保するためにいくつもの添加剤が使われている。
オイルが新しいうちは、こうした添加剤が効果を発揮してくれるが、使っているうちに酸化や劣化が進み本来の性能から低下していく。
さらにエンジンの燃焼によって発生するカーボンや未燃焼ガス、燃焼ガスの吹き抜け分などにより、オイルは劣化していく。
それらが添加剤の劣化と混ざり合ってスラッジを形成して、エンジン内部に堆積してしまうのだ。
シリンダーヘッドやオイルパンにスラッジが堆積してしまうと、それにより油圧系統に不具合が起こってオイルがエンジン全体に充分に送られなくなってしまうケースも起こりうる。
そうなればエンジンは潤滑不良を起こし、最悪の場合は焼き付き、ブローしてしまう。
インターネットで検索すれば、まるでヘドロのようにエンジン内部でスラッジが堆積しており、それを取り除く様子を見つけることもできる。
こうなってしまうと、エンジンを完全に分解して洗浄するしか、回復させる手段はない。
■愛車を長く乗るためにも定期的に点検と交換を行うべき!
最近のクルマはオイル管理をキチンとすれば、10万km走行してもエンジンの摩耗は少なく、問題なく乗り続けられるケースも珍しくない。
逆にオイル管理を怠れば、エンジンは10万kmにも届かずに走行不能になってしまうこともあるのだ。
シビアコンディションと呼ばれる過酷な使用環境は、連続走行やサーキットでの走行などハードな環境で使用されるものと思われがちだが、実は渋滞やチョイ乗りもクルマにとってはシビアコンディションに相当することもある。
自動車メーカーが指定するオイルのグレードや粘度、交換頻度を参考に、それと同等以上の品質のオイルを同じように交換して、エンジンの良い状態を長持ちさせることを心がけよう。