床下のスペアタイヤ付近にぶらついてる謎のチェーンって放置していいの? じつは安全と便利さを両立したスグレモノ機構だった!
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WEB CARTOP より
あんなところになぜチェーン?
先日、道路脇に停まっていたトラックを見て気になることがあった。車両の床下? 下部にスペアタイヤが付いているのだが、その固定されたスペアタイヤがチェーンに吊り下げられたようになっているのだ。そもそもスペアタイヤが固定されているのであれば、あえてブラブラするチェーンを付ける必要性もないような気がするのだが、これにはどういう理由があるのだろうか?
安全性を高める二重の保護機能
スペアタイヤキャリアチェーンは、おもにスペアタイヤが走行中に脱落するのを防ぐための安全装置だ。大型トラックやバスなどの商用車では、スペアタイヤは通常、車体下部のキャリアに固定されているが、長距離走行や雪道やわだちなど、悪路走行による振動で固定部分が緩んでしまう可能性がある。最悪の場合、スペアタイヤを落としてしまうことすらあるのだ。実際、2017年にはスペアタイヤの落下が原因で痛ましい死傷事故も起こっている。
スペアタイヤは運転席から離れた場所に添え付けられていることが多いため、ドライバーがスペアタイヤの異常に気付かないこともある。そのような事態に備えて、チェーンによる二重の保護機能を設けているのだ。
スペアタイヤは、道路運送車両法に基づく「自動車点検基準」において、「自動車の点検及び整備に関する手引として、スペアタイヤ取付装置に緩み、がた及び損傷がないかをスパナ、目視、手で揺するなどして点検すること」、「スペアタイヤが傾きや緩みなく確実に取り付けられているかを目視、強く押すなどして点検すること」、「ツールボックスの取付部に緩み及び損傷がないかをスパナ、目視などにより点検すること」が義務づけられており、チェーンはその安全性を確保するための重要な役割を果たしているのだ。
アナログでも利便性高し!
整備性と実用性を兼ね備えた設計
スペアタイヤキャリアチェーンには、安全性以外にも重要な機能がある。それは、スペアタイヤの交換作業を容易にする役割だ。大型車両のスペアタイヤは非常に重く、人力での取り扱いが困難。チェーンがあることで、スペアタイヤを地面まで降ろす際のコントロールが容易になり、作業効率が大幅に向上するのだ。
また、チェーンは適度な遊びをもって設計されている。これにより、車両が悪路を走行する際や、段差を乗り越えるときなどに、スペアタイヤがある程度動き、固定部分への過度な負担を軽減することができる。この柔軟性は、長期的な耐久性にも寄与している。
SUVやバンにも採用される理由
近年、ランドクルーザーやキャラバンといった一般向けの大型SUVやバンにもスペアタイヤキャリアチェーンが採用されているケースが増えている。これは、これらの車両が持つ本格的なオフロード性能や、長距離ドライブでの使用を想定しているため。
商用車と同様に、悪路走行時の安全性確保や、万が一パンクしたときにタイヤ交換の作業性が向上するといった利点が、一般車両にも適用されているのだ。とくに、アウトドアやキャンピングなどでの使用を想定した車両では、実用的な装備として重宝されている。
一見すると単純に見えるスペアタイヤキャリアチェーンだが、安全性、整備性、実用性といった多くの要素を考慮して設計された、車両にとって重要な装備なのである。安全装置としての役割はもちろん、整備時の作業性向上や、車両の耐久性向上にも貢献している。今度、大型車両の下部に付いているスペアタイヤチェーンを見かけたら、その重要な役割を思い出してみてはいかがだろうか。