ハイブリッド車は酷暑に弱い!? エンジンオイルの劣化はガソリン車よりも早い!! 長持ちさせる予防策とは?
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ベストカーWeb より

日本ではハイブリッドの市場シェアは5割を超えているハイブリッド車。先進車だからといって、むしろ純ガソリン車より気を使わなければいけないこともあったりするのでしょうか? また酷暑はハイブリッド車にとってどんな影響を与えるのか、徹底解説。
文:ベストカーWeb編集部/写真:ベストカーWeb編集部、Adobe Stock、トビラ写真(写真AC)
ハイブリッド車は早めのエンジンオイル交換を!
エンジンの使用頻度が低いと感じがちなハイブリッド車ですが、実は短距離走行や頻繁なエンジン始動により、意外とエンジンオイルの劣化は早いのです。特に猛暑時は負荷も高まりやすいため、半年または5000kmごとの交換が理想的。
ハイブリッド車は、エンジンとモーターの切り替え運転が頻繁で、エンジンが低負荷で長時間作動するシーンが多く見られます。このため、オイルが冷えたまま使われる時間が長く、劣化スピードが意外と早いのです。
さらにハイブリッド車ではエンジンの始動・停止が頻繁なため、「低温始動性能」に優れた低粘度オイル(例:0W-16)が推奨されるケースも多く、車種によってはメーカー指定のオイルを使わないと保証対象外になることもあります。
例えばヤリスハイブリッドには、低粘度のオイル品質規格「JASO GLV-1」認定を取得した0W-8というハイブリッド専用の超低粘度オイルが使われています。
常温での流動性能が高いエンジンオイルのため、従来の0W-16(現行プリウスが純正)のエンジンオイルに比べ、燃費性能が約0.7%向上したほか、約25%も低粘度化したといいます。
ちなみに2020年5月に、ILSACの次世代規格であるGF-6が、APIのSP規格とともに施行され、省燃費性を含む総合性能が向上し、最新のエンジン機構へ適応したオイルとなっています。
ヤリスハイブリッドは、SP規格の1つ下のSN規格で、SN PLUS 0W-16、SN PLUS 0W-20、SN 5W-30というトヨタ純正エンジンオイルも適合エンジンオイルとして使用できます。
純正オイルは、そのクルマの特性やエンジン制御に合わせて最適化されているため、迷ったら純正を選ぶのが無難です。とくに保証期間内のクルマやハイブリッド車は、純正品指定であることが多く、社外品使用によるトラブルは避けたいところ。
一方で、社外品オイルの中にも、性能が高くコストパフォーマンスに優れる製品は多数あります。例えば、スポーツ走行を想定した高温耐性のある製品や、燃費重視の低摩擦オイルなど、用途に応じて選択することで、より快適な走行が可能になります。
大切なのは、規格(API/ILSACなど)と粘度がクルマに適合しているかどうかの確認。信頼できるメーカー製であれば、社外品でも十分安心して使えます。
夏に多いハイブリッド車のトラブルとは
ハイブリッド車のモーターを制御するインバーターは高温になるため、専用の冷却システム(ウォーターポンプ+冷却ファン)で冷却されています。しかし真夏の猛暑や渋滞で冷却効率が落ちると、冷却水の温度が上昇し、インバーターがオーバーヒートすることがあります。
症状としては、警告灯の点灯(ハイブリッドシステム異常)、急な出力制限、最悪、エンジンやモーターが停止し走行不能となります。特に冷却水(LLC)が劣化していたり、電動ウォーターポンプが弱っているとリスク大です。インバーター用の電動ウォーターポンプが高温で作動不良を起こすと、冷却不良によりHVシステムがダウンすることもありますので特に注意が必要です。
またハイブリッド車の高電圧バッテリーは、適正温度を保つために冷却ファンで冷やされていますが、高温環境下では温度管理が追いつかず、電池性能が低下します。「熱ダレ」と呼ばれる現象が起きると、バッテリーの出力が制限され、モーターアシストが効きにくくなり加速が鈍くなることがあります。
バッテリーが劣化してくると、エアコンの冷えが悪くなります。ハイブリッド車のエアコンはモーター駆動式のコンプレッサーを使用するため、エアコンに負荷がかかると電力消費が増え、バッテリーの負担も増すことがあります。また、コンプレッサーオイルが劣化していると、冷えが悪くなったり、異音が発生する可能性もあります。
夏に特に多いものとしては、補機バッテリー(12V)の劣化による始動不能です。猛暑で車内温度が上がると、補機バッテリーも過酷な環境に晒されます。すでに劣化している場合、気温の影響で電圧が下がり、クルマが起動できなくなるトラブルが起こることがあります。
以上のようにならないために予防策を行うことが必須です。もしお乗りのハイブリッド車に不安を感じたら以下の予防策を行ってください。
■ハイブリッド車を長持ちさせる予防策
・冷却水の交換時期を守る(5年または10万km)
・バッテリーファンや通気口を清掃する
・エアコンの冷えが悪いと感じたら点検
・補機バッテリーは3〜5年で交換を検討
・長距離ドライブ前にはHVシステムの点検を
ハイブリッド車のバッテリーが上がったら
ハイブリッド車も、補機バッテリーが上がった場合、ガソリン車と同様に、ブースターケーブルやジャンプスターターで対応できます。ここで注意しなければいけないのは、ハイブリッド車はガソリン車からバッテリー上がりを救援(充電)されることはできても、バッテリー上がりのクルマを救援することができないことです。
他のガソリン車のバッテリー上がりを救援すると、充電によってガソリン車のスターターが駆動することで過電流が流れ、ハイブリッド車側の保護回路が作動したり、電源系統が故障する可能性があります。もちろん、ハイブリッド車同士の救援も厳禁です。
もう一点注意しなければいけないのは、補機バッテリーはガソリン車と同じ鉛電池ではありますが、専用バッテリーが使われており、通常のガソリン車のバッテリーとの互換性がありません。
鉛バッテリーは、充電中に化学反応によって少量ながら水素が発生します。そのため、水素が充満しないように補機バッテリーには水素ガスを車外に放出するための特別なホースが装着されています。ハイブリッド車は、ガソリン車のバッテリーを使うと危険なので、メーカーの純正バッテリーを使うようにしてください。
ちなみに30系プリウス(2009年~2015年)の駆動用バッテリー交換の目安は、一般的に走行距離15万km前後か、使用年数10年以上。交換工賃含め約18万~20万円です。補器バッテリーの寿命は4~5年。
現行プリウスの場合は、新車購入後5年間または走行距離10万kmまでに駆動用バッテリーが寿命を迎えた場合は無償で交換してくれます。有料の場合は、現行プリウスの駆動用バッテリーの価格は約15万円(リビルト品は10万円程度)、工賃込みでは20万円程度かかります。余談だが日産 リーフの場合、メーカー保証を過ぎたバッテリー交換の費用は、新品バッテリーで24kWh=65万円、30kWh=80万円、40kWh=82万円ほどかかります。
故障の予兆は、メーターパネルに「充電不足」のメッセージが表示されたり、「READY」インジケーターが点灯しなくなったり、ハイブリッドシステムが起動しにくくなるなどが挙げられます。
また、電装品(ヘッドライト、パワーウィンドウなど)の動作が遅くなる、バッテリー液の減りが早くなるなどの兆候も現れることがあります。
いずれにしても新車から5年以上経ったハイブリッド車を長持ちさせたいなら、ディーラーや整備工場でしっかりメンテナンスを行いましょう。