タイヤの窒素ガスは意味ある? 燃費や寿命に効く最新メンテ術
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ベストカーWeb より

クルマが走行する上で欠かせないのがタイヤ。このタイヤの性能を左右するのが、空気圧の存在だ。タイヤの空気が抜けにくくなり、タイヤも長持ちすると言われ、カー用品店やカーディーラーで窒素充填をおススメされたことがある人は、結構多いだろう。本当に窒素充填は大きな効果を得られるのか、効果の真偽を確かめていく。
文:佐々木 亘/画像:Adobestock(トップ写真=Proxima Studio@Adobestock)
どうして窒素は抜けにくいのか
私たちが常に呼吸で体内へ取り入れ、もちろんタイヤの中にも充填されている空気の中にも窒素は含まれている。まずは、空気がどんなものなのかを紐解いていきたい。
小中学校の理科で習うことだが、空気は約78%が窒素であり、酸素が20%、そのほかアルゴンや二酸化炭素などで構成される気体だ。
この数字だけをみると、窒素78%の空気と窒素100%の空気では大差がないようにも感じるが、タイヤの中に充填された空気と窒素では、空気が抜けていく数値である透過係数が大きく変わってくる。
窒素は不活性ガスで、分子そのものの動きが遅いため、気体が膜状の物質をどれくらい通り抜けるかという透過係数が小さくなる。また空気とは違い、水分をほとんど含まないため、水分の温度変化(膨張や収縮)によって、体積が変化することが少ないのが特徴だ。
タイヤの空気圧を変動させる要因は、透過係数と熱。この2つに強い窒素は、タイヤの空気圧変化を空気よりも小さくすることが可能なのである。
窒素充填の始まりは航空機から
クルマのタイヤに窒素を入れるようになったのは、航空機が始まりと言われている。難燃性でありドライエアである窒素は、過酷な環境で使用されながらトラブルを生み出したくない航空機のタイヤに数多く充填されるようになった。
航空機のタイヤ空気圧は1本あたり1200~1400kPa程度。これは乗用車の5~7倍に匹敵する。また、着陸時のタイヤ表面温度は250度にものぼりながら、高度1万メートル上空はマイナス45度前後となる急激な温度変化もあるのが特徴。こうした環境下で安定したタイヤ性能を引き出すには、抜けにくく温度変化に強い窒素が欠かせないというわけ。
こうした厳しい環境で使われている窒素は、やがて自動車レースでも使用されるようになり、一般ユーザーのところまで下りてきたのだ。
航空機やレースでは効果があるが一般ユーザーに必要なの?
窒素を入れるメリットは大きく分けて2つ。空気が抜けにくいという点と温度変化に強いという点だ。どちらもタイヤ空気圧を一定に保ち、タイヤの寿命を延ばして燃費を良くする効果がある。
まず、空気の抜けにくさだが、タイヤ自体にはエア漏れを少なくする期待の透過率の低いブチルゴムを材料にしたインターフィルムが採用されている。
ブチルゴムの場合、水素の透過率を100とした時に、酸素は3%、窒素は0.5%と透過率に差はあるものの、どちらもほとんど漏れないという数値だ。
確かに1年近く空気圧のチェックをしていないタイヤとなると、空気圧の差は生まれてくると思うが、それでも微量。空気の抜けにくさという面では、空気も窒素もほとんど変わりはない。
次に温度変化について。これに関しては一定の効果が生まれると考える。しかしながら、その差も空気の熱膨張というよりは、水蒸気の膨張や収縮によるものであって、窒素と同様に空気も水分量の極めて少ないドライエアを充填できれば、その差は無視できるものになるだろう。
ただ、青空駐車でクルマの片側だけ陽が当たる場所へ駐車していて、昨今のように日中の気温が35度以上の猛暑日が続く場合、4輪のタイヤ空気圧を一定に保つためには、窒素充填の効果は高い。これは寒さの厳しい冬場でも同じことが言える。
したがって、一般ユーザーが窒素充填のメリットを享受するのなら、春先に窒素を充填してタイヤに厳しい夏の環境を乗り越えるといった具合になるだろう。最近は北から南まで、厳しい暑さが続いているから、日本全国どこでもある程度の効果は実感できるはず。
ただ、本当にクルマやタイヤのこと思うなら、空気充填でもいいから、こまめに空気圧のチェックを行ってあげることに尽きる。あまり空気圧点検に時間を割けないという人にとっては、窒素充填がクルマに優しいメンテナンスとなりえるのだ。