クルマのホイールをよく見ると「金属の板チョコ」みたいなものが貼ってある! 見栄えが悪くても外しちゃダメな重要パーツだった
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WEB CARTOP より
回転するタイヤ&ホイールの重量バランスを整える目的
このサイトの記事を読まれている読者さんの多くはクルマ好きだと思います。ですので、愛車の洗車は自分で行っているという人も少なくないでしょう。思い入れがある人ほど細部までキレイにしたいと思うでしょうから、きっとスポークの隙間から見えているホイールの裏の方も丁寧に洗ったりしているのではないでしょうか。
そのときにホイールのリム面にくっついている、板チョコの一部のような形状の金属製のチップが気になったりしていませんか? あの、釣りで使う重りのような色合いのチップです。あれの付け根にどうしても汚れが残ってしまって邪魔だなと感じている人もいるでしょう。
でもあのパーツは、クルマが安定して走るためには必要なものなので、外したり付け直したりしないほうがいいですよ。
ここではあの金属製のチップ=ホイール・バランサーウエイトについて解説していきましょう。
■あの金属チップはいったいなに?
あの金属製のチップの正体を知らなくても、理系の人なら「ホイール・バランサーウエイト」という名称を聞いて、だいたいの働きを察せられるかもしれません。
あのチップの働きは、ホイールの重量バランスを整えるためのウエイト(重り)なんです。
■あの重りが無いとどうなるの?
「ホイール・バランサーウエイト」は、ホイールとタイヤ全体の重量の偏りをなるべくゼロに近づけるための重りです。ほとんどのウエイトの素材は、金属のなかでも比重の高い「鉛(なまり)」で作られています。
バランサーウエイトは機能優先のつくりなので見た目がイケてなく、せっかくデザインが気に入って購入したホイールの美観を損なうから邪魔だと思った人もいるでしょう。
しかしあのウエイトをむやみに外してしまうとホイールのバランスが崩れて振動が発生する可能性が高くなります。
レンタカーや代車などを運転していて、高速に乗ったときにハンドルにブルブルとした振動を感じたことはないでしょうか?
あれは、ホイールバランスの偏りによって発生する振動なんです。
みなさんも日常、スマホを肌身離さず持ち歩いていると思いますが、あのバイブの振動がホイールの振動と同じ原理で発生しているんです。
スマホの振動を発生させているのは、小さいモーターの軸に付けられた扇形の断面の小さな重りです。
キレイに回転する円形の断面ではなく、わざと中心が偏るように扇形にしています。
中心がズレて割り箸が刺さったリンゴ飴をクルクルまわすとぶるんぶるんとブレを感じますよね。あれが振動発生の原理です。
「たかが振動でしょ?」と思ってそれを放置すると、いろんなダメージがクルマの各部に蓄積されていきます。
もっとも深刻なのはネジ類の緩みでしょう。
クルマはエンジンという振動の発生源を抱えて動く乗りものなので振動の対策は必ず行われていますが、高速で回転する重いタイヤによる振動の力はかなり大きなものです。
ハンドルにまで伝わるくらいなのでなんとなく想像してもらえると思いますが、その振動によって足まわりのパーツがブルブルと揺さぶられるので、いくらしっかり締め付けてあっても、長時間は耐えられません。
一度緩みが発生してしまうと、パーツの脱落まではそれほど時間を要しません。
最悪のケースは、舵が利かなくなってコントロールが失われることもあり得ます。
現代の技術でもタイヤ&ホイールのバランスに偏りが生じるワケ
■ホイールの振動が発生する要因
現代のクルマのホイールはかなり精密に作られているので、メーカー純正品や大手メーカーの製品であれば、単体では重量の偏りはほとんどないと言っていいでしょう。
ただ、ホイールには空気を注入するためのエアバルブを装着しなくてはなりませんし、なによりも比重が高くて重いタイヤを装着しなくてはなりません。
エアバルブは必ず装着しなくてはならないので、「ホイールの設計段階でその重量分を考えたバランスで作れば良いじゃん」と思った人もいるでしょう。
でも、エアバルブにはいろんな形状、素材のものがあってその重量はバラバラですので、ぴったりバランスが取れる設計は難しいと思います。
そのバルブ程度の重さでも高回転になれば、十分振動を発生する要因になり得るのですが、いちばん大きなファクターはタイヤです。
大きなサイズの車両やスポーツ系の車両に装着されるタイヤは17インチ以上と大径サイズのものが多いので、その重量は1本あたり軽く10㎏を越えます。いまはホイールの軽量化が進んでいますので、ホイールよりもタイヤのほうが重いことになります。
そして、重量バランスの偏りの影響は回転の中心から離れるほど大きくなりますので、タイヤのバランスの偏りがブレを発生させる最も大きな要因なのです。
■ホイールの重量バランスを整える方法
タイヤの製造技術も進み、いまではかなり重量の偏りを抑えることができるようになっていますが、もともとの重量が大きいため、内部構造材やゴムのほんの少しのズレでも重量の偏りが数十グラムというケースも珍しくないようです。
そのため、タイヤには「軽点」と呼ばれるいちばん軽い部分に黄色い丸でマーキングが記されています。
この軽い部分と、ホイールのいちばん重い部分(=ほとんどの場合はエアバルブがある位置)を合わせることで、タイヤ組み付け時でのバランスの偏りを少しでも減らす工夫がされているんです。
そのうえで、「ホイール・バランサーウエイト」を使ってさらに重量の偏りをゼロに近づけるためにバランス取りをおこないます。
■バランス取りって実際にどうやるの?
ホイールのバランス取りは専用のマシンを使って行います。タイヤを組み付けたホイールをある程度の速度で回転させないとならないので、個人の装備でそれを行うのはほぼムリでしょう。
マシンの軸には回転のブレが起こる角度を検知するセンサーが備わっていて、それによって重量がいちばん軽いポイントとブレの大きさが数値でわかるようになっています。
それが判明したら、あとはその偏りを打ち消す重さのウエイトを、マシンが示した角度の位置に貼り付けます。確認のためもう一度マシンを動かしてみて、ブレが消えていればバランス取り作業は完了です。
■バランス取りにかかる費用は?
店によって設定がいろいろですが、ホイールのバランス取りの工賃は1本あたりだいたい500円から1000円くらいが相場のようです。これを高いと感じて省いてしまうと、車体各部にダメージが蓄積しますし、最悪は事故にも繋がる恐れもあるのでケチらないほうが賢明だと思います。
タイヤを購入する場合は、組み付けとバランス取り(+古タイヤの処分費用)の料金がコミコミの場合もけっこうありますので、その点を踏まえて店選びをするといいと思います。
もし、自分のクルマが120km/h付近でハンドルがブレる症状を抱えているのなら、すぐにでもタイヤ専門店やカー用品店、または近くの整備工場に問い合わせして、ホイールのバランス取りを行ってもらいましょう。