カウンタービームにプロビーム! ただ明るくしているだけじゃない「トンネル内照明」の方式とその効果とは
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WEB CARTOP より
トンネル内の照明はただ照らしてるだけじゃなかった
夜間の走行中、道路際を明るく照らす道路照明の存在に気付いたことがあるだろうか。当たり前だが、真っ暗になる夜間は、なにか照明がないとまったく見えないことになる。これが道路であれば、自車の前方に広がる道路上の状態が確認(見えない)できないということになる。そのために、クルマにはヘッドライトが装備されているわけだが、ヘッドライトによる前方照射では、自車前方の道路上を確認するのが精一杯で、広範に前方を照らしてくれるわけではない。

ところが、道路の付帯設備が充実した自動車専用道路、たとえば高速道路などでは、道路際に一定の間隔で照明灯が設けられ、道路周辺も照らしてくれるため、周囲の状況がよくわかり、夜間走行の疲労が軽減されるとともに、安全性が大きく引き上げられている。
こう考えてみると、自動車にとって照明が必要な状況は、なにも夜間走行だけに限った話ではない。山間部や海底など、人工的に作られた通り道「トンネル」も同様である。外光が遮られる構造のため、昼間でもトンネル内を照らす照明が必要となってくる。トンネル内部が明るく照らされていることで、法規上点灯しなければならないが、ヘッドライトを使わなくても走ることができるほどだ。

さて、このトンネル内の照明だが、その目的や効果によっていくつかの照明方式が用意されていることをご存じだろうか? トンネル内の照明は、単にトンネル内を明るく照らすだけの働きではないのである。トンネル内の照明灯を、基本から考えてみることにしよう。
まず、トンネル内に取り付けられた照明灯の位置からだが、トンネル天井面、走る車両の真上と考えてよい。これが、たとえば側壁などに取り付けられたらどんな照明効果になるかは想像に難くない。常識的に、直上からの配光がもっとも見やすく効果的な照明方法であることが理解できる。

ところが、天井の取り付けられた照明灯だが、照射光の方向がいくつかにわけられていることはあまり知られていない。家屋の照明(間接照明は除く、直接照明のみ)の場合、一般的に天井に取り付けられ照明器具の照射の場合、照射の方向性は無指向性、全方向に向かって光が照射されている。このため、室内のどの箇所もむらなく均等の明るさで照らされ、人の目が室内の様子を違和感なく見ることができるようになっている。

トンネル内の照明も同じで、まんべんなく配光する方法があり、これは対象照明方式と呼ばれている。照射光がトンネル内に均等に届くため、ドライバーの目からは自然な感じでトンネル内の状況(先行車、後続車も含め)を確認することができるようになっている。
この方式に対し、走行車両に向かって照射光を当てる方式がある。カウンタービーム照明方式と呼ばれ、自車に向かって光が照射されたため、先行車の背後は陰となって暗くなる照明方式だ。なぜ先行車の背面が暗くなるような照明方式が採られているのかといえば、光が当たっている路面と先行車の背後に明るさの違い(輝度の対比)が生じるため、そのコントラストによって前方の状車の存在が確認しやすいという特徴をもち、交通量の少ないトンネルの入口で採用されている例が多い。

トンネル内の照明は時代とともに進化していった
カウンタービーム方式とは反対に、走行車両と同方向に光を照射するプロビーム照明方式と呼ばれるものがある。先行車両の背後に光が当たるため、トンネル内での先行車の存在がよく確認できる照明だ。前車の詳細がよく見えるこの方式は、多くの車両が連なって走る交通量の多いトンネルで採用される照明方式だ。

一方、照明灯の色はどうだろうか。現在は、白色光が一般的だが、少し前の時代に作られたトンネルではオレンジ色の照明灯を目にする場合がある。このオレンジ色の照明灯はナトリウム灯と呼ばれ、1960年代から普及した照明灯である。消費電力が少なく寿命が長いことから採用された照明灯だが、トンネル内が汚れた排気ガス(当時、排出ガス規制はなく燃焼ガスは制約なしで排出されていた)で充満している状態で、照明効果(光の透過効果)が白色灯より優れるためオレンジ色のナトリウム灯が採用されたという。

発光管にナトリウム蒸気を封入したナトリウム灯は、オレンジ色の発色となるため照明による視認性に優れ、高速道路を主体とする照明灯として採用されたものだ。長寿命性も大きな特徴だったが、さらに当初の低圧ナトリウム灯から3倍ほど寿命が延びた高圧ナトリウム灯に切り替えられていった。
しかし、排出ガス規制が進みトンネル内の空気汚染がかなり低減化されると、照明光がオレンジ色である必要はなくなり、むしろ自然光に近い白色光の照明灯のほうがよりよいと考えられるようになり、白色灯に切り替えられるようになっていった。これには演色性(照明灯の光源色により照らされた物の色が異なって見える事象)の問題も手伝って、Hf(高周波)蛍光灯への移行が進むことになった。その後、蛍光管の進化は進み、セラミックメタルハライドに切り替わることで長寿命性、省電力化が大きく引き上げられている。

そして、発光体を蛍光管からLEDに切り替えることで、さらに長寿命性、省電力化は大きく向上し、高出力化も可能になったことから現在はこの方式が使われている。ちなみに、LED灯の寿命は、当初の低圧ナトリウム灯と比べて10倍程度に延びたとされている。照明灯の進化により、トンネル内や高速道路の夜間走行時に、視認性やそれに伴う疲労の軽減が大きく引き上げられたことになる。
日常、何気なく走っているトンネルや夜間の高速道路だが、思い出したら照明灯の色や光の当たり方に注意してみるのはどうだろうか。意外と細かな点が気になってくるかもしれない。






































