とりあえずスタッドレスを履けばどんな道でも安心……ではなかった! 必ず憶えておくべき「サマー」「オールシーズン」「スタッドレス」タイヤの得意不得意な場所!!
口コミを書く
口コミを見る
WEB CARTOP より

サマータイヤは低温が苦手
何年か前に大雪が降った夕方に、皇居周辺、桜田門あたりの緩い坂道を上ることができず、乗り捨てられていた(?)クルマを、ニュースが実況していたことがありました。その場所を知っている人は、「なんであの程度の坂道で?」と思われるほど、普段は何でもない場所です。まあ、こんな事例はニュースを見るまでもなく、家の近所でも見かけることがあります。えっ、経験したことがある? そういう人も少なくないと思います。
事実、ちょっとした雨なら普段と変わることなく運転できるし、経験的にいっても雨であればそれほど緊張はしないでしょう。でも雪になれば話は別。ちょっとの雪でも”たいした”ことになってしまうんです。雪が降るのは気温が3度を下まわったあたりから。ちらちらと降るくらいなら雨とそれほど大差なく、たいしたことはありませんが、うっすらと地面が白くなりだすと、サマータイヤはほぼ仕事をしなくなってしまいます。
これはタイヤのトレッドゴムの特性に関係しています。トレッドゴムは気温が7度以下くらいになると次第に柔軟性が悪く……つまり、硬くなっていきます。ドライ路面なら問題なく走ることができますが、路面が濡れてくると固くなったゴムは一気に滑りやすくなるのです。
雪が降るような気温では、間違いなく7度以下。場合によっては0度以下になっていることもありますから、サマータイヤのグリップパフォーマンスは大幅に低下してしまいます。うっすらと白く積もり出した雪を踏むと、雪は簡単に溶けてしまいますが、このとき、タイヤと路面の間には、かき氷が解けかけたようなシャーベット状の雪が入り込んでしまいます。これがサマータイヤのグリップをさらに奪ってしまうのです。
その点、オールシーズンタイヤやスタッドレスタイヤは、こうした雪の路面が得意です。オールシーズンタイヤは夏も走れるようなゴムが使われているので、ゴムが冷えると硬くなりがちですが、それでもサマータイヤよりは低温での柔軟性が発揮できるように作られています。加えて、路面を引っ掻くのに具合のいいトレッドデザインになっていますから、タイヤと路面の間に入ったシャーベットを引っ掻き、路面とコンタクトしてくれるわけです。
スタッドレスはいうまでもなく氷雪性能を重視したゴムが使われ、またそうした路面に適したトレッドデザインになっていますから、さらに頼もしいグリップ性能を発揮してくれます。
シャーベット状の路面ではスタッドレスタイヤでも注意が必要
なら、スタッドレスタイヤをつけていたら万全じゃないか。
まあ、間違ってはいません。ただ、もうちょっと正確にいうと、雪道で考えられる最良の性能を備えているだけであって、当たり前の話ですがサマータイヤでドライ路面を走るようにはいきません。
わりと勘違いしがちなのですが、タイヤにとって氷雪性能でもっとも過酷なのはマイナス10度、マイナス2度の厳冬の氷雪ではなく、気温0度付近の氷雪です。そう。皆さんがわりと頻繁に遭遇する気温域です。だからこそ、世界のどの国よりも、日本でスタッドレスタイヤが高性能なのです。
現在のスタッドレスタイヤは、ロングライフ性能(性能の落ちにくさ)、静粛性、操縦安定性、転がり抵抗など、一般的なサマータイヤが求める性能もかなりレベルアップしているのですが、もっとも重視されているのは氷上性能です。
いまさら解説の必要はないかもしれませんが、雪上性能と氷上性能は、タイヤに求める性能が異なります。雪上性能は雪柱せん断力といって、雪の路面を踏みしめたときに発揮するグリップ力が重要になってきます。溝の深さや交差する溝の交差点が雪に有効といわれています。
これに対して、氷上グリップ性能は接地面積が重要で、密着してグリップを発揮する凝着摩擦力が重要といわれています。
氷上性能を重視している現在のスタッドレスタイヤは、接地面積を広げるために、溝幅が細くする傾向にあります。しかしそうなると、0度付近の降雪でみられる厄介なシャーベットの排雪性能が不足気味になります。
また、こうした路面はハンドルを取られやすく、最悪クルマが姿勢を乱しスピン、あるいは道路から逸脱といった危険な状況に陥る可能性もあります。つまり、雪道で万能そうに思われるスタッドレスタイヤにも苦手な冬道の場面というのは存在するのです。
また、根本的な問題として、スタッドレスタイヤがいくら氷上グリップ性能がいいといっても、ドライ路面ほどのグリップ性能はありませんから、昼間に雪や氷が解けて濡れた路面が夕方になって凍結するといった場面に出くわすと、足もとをすくわれたように滑る、なんてことも考えられます。
大切なのは、路面の様子や外気温を常に気にしながら走ること。後続車の有無を確認したうえで、ときどきブレーキを軽く踏んで路面のグリップの様子を確かめる注意深さは持ちたいものです。
蛇足ですが、まわりにいいペースで走っているドライバーのすべてが安全を確信して走っているわけではないことも頭に入れておいてください。