え、厚底靴やハイヒール サンダルでの運転は違反なの? バックストラップ付きでかかとを固定できるならOK? 実は意外な落とし穴があった……
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ベストカーWeb より

夏になると増える“サンダル運転”や、流行りの“厚底シューズ”での運転。本当に違反なのでしょうか? 安全運転に支障があるのでしょうか? 実際の道路交通法や判例、安全面のリスクを徹底検証。「かかとがあればいいでしょ」という考えはいけないのでしょうか?
文:ベストカーWeb編集部/写真:ベストカーWeb編集部、Adobe Stock(トビラ写真:Christian@Adobe Stock)
サンダルや厚底靴での運転は違反なのか?
「夏場はサンダルが涼しくてラク」「厚底は脚長効果があるしおしゃれ」——そんな理由でそのままクルマを運転している方、意外と多いのではないでしょうか。まず気になるのは、「そもそもこれって違反になるのか?」という疑問です。
結論から言うと、サンダルや厚底靴そのものの着用が直ちに違反になるわけではありません。しかし、道路交通法第70条「安全運転義務違反」に該当する可能性があり、万一事故を起こした際には重大な過失として扱われることもあります。
道路交通法では明確な規定はありませんが、「運転操作に支障をきたす状態」とみなされれば、道路交通法の第70条(安全運転の義務)違反となるほか、都道府県によっては、道路交通法施行細則によって明確に規制されている場合もあります。
●道路交通法第70条(安全運転の義務)
車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。
●道路交通法第70条の安全運転義務を違反した場合、以下の反則金と、違反点数2点が加算
大型車 1万2千円
普通車 9千円
二輪車 7千円
小型特殊車、原動機付自転車 6千円
東京都や大阪府をはじめ、各都道府県の道路交通法施行細則をまとめると、以下のような履き物は違反と見なされやすいです。スリッパ、げた、ハイヒール、厚底の靴、木製サンダル、かかとのない靴。
警視庁や各県警では「サンダル」、「ビーチサンダル」など、足が固定されない履物での運転は危険だとして注意喚起をしています。厚底靴に関しても、ブレーキペダルの感覚が鈍る、靴底が引っかかるなどの危険性が指摘されています。
かかとがあれば本当に大丈夫?
バックストラップのついた合成樹脂製のカジュアルサンダルなど「かかとが固定されればOK」と考えている人も多いですが、問題は“固定性”と“操作性”です。以下のポイントに注目しましょう。
・かかとの厚さがありすぎるとペダル操作が不安定に
・靴の素材が柔らかいと、ペダルから足が滑るリスク
・バックストラップ付きサンダルでも、足との一体感が不足していれば危険
見た目で「大丈夫そう」に見えても、実際の操作に支障があるならば安全運転義務違反と判断される可能性があります。
過去の事故例と判例から学ぶ
サンダルや厚底靴での運転が直接の原因とされる事故も実際に起きています。
事例①:合成樹脂製のカジュアルサンダルでの運転中にブレーキ操作ミス → 電柱へ衝突(大阪府、2021年)
事例②:厚底ブーツでの踏み間違いによりコンビニへ突っ込む事故(群馬県、2020年)
どちらも運転者は「ちゃんと履いていた」と証言していますが、靴の構造上、制動操作に問題があったことが裁判でも認定され、過失割合が加重されたケースもあります。
安全な運転靴とは? 専門家のアドバイス
JAF(日本自動車連盟)や自動車教習所の教官も、運転には“専用の靴”を準備すべきと強く推奨しています。理想的な靴の条件は以下の通りです。
・かかとがあり、足全体をホールドできる
・厚すぎないソール(底の厚さ1〜2cm)
・靴底が滑りにくいゴム製で、柔軟性がある
・重すぎない(ペダルの感覚が伝わりやすい)
たとえば、ドライビングシューズやスニーカータイプのものは、多くのプロドライバーにも愛用されています。靴底が薄くしなやかで、ペダル操作が繊細に行えるのが特徴です。
じゃあどこまでがOK? コンビニまでの運転も注意
「家からコンビニまで5分だからサンダルでいいか」と思うのは禁物です。距離に関係なく事故のリスクは常に存在します。実際、短距離での油断が重大事故を引き起こすケースが多く、警察も「油断運転の一例」として取り締まりを強化しています。
また、高速道路SAなどで仮眠後に運転を再開する際、スリッパのまま運転をしてしまい注意を受ける例もあるため、旅先でも「運転用の靴」は準備しておくと安心です。
編集部まとめ
夏場になると増えるサンダル履きの運転。見た目には涼しげでも、安全性という視点ではリスクが多いと実感しました。「かかとがあればOK」と思っている方も多いですが、靴の素材や固定性によっては“運転に適さない”場合もあります。
今回改めて、「運転は道具選びから始まっている」という意識が大切だと感じました。安全運転は装備から。靴にもこだわりましょう。