あおり運転を減らせる切り札に!? 知らない所で意識している「ドレス効果」ってなんだ??
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ベストカーWeb より
スーツを着ると仕事モードに変わる、ハンドルを握ると性格が変わる、どちらもドレス効果というものが「変わる」理由になっているという。そしてクルマにもドレス効果が問題を引き起こすことがあるらしい。そこで効果の内容と対策を知り安全運転に寄与するかもしれない、ドレス効果をみていこう。
文/佐々木亘、写真/Adobe Stock(トップ画像=Free1970@Adobe Stock)
■知覚が生み出すドレス効果の不思議
ドレス効果に関する研究は、様々なところで確認できる。日常生活でも、ドレス効果を知らないうちに体験していることが多い。
例えば、目の前にいる人が何かお願いをしてきたとき、その人の服装が「だらしない寝巻」と「スーツ」だったら、どちらの願いを聞き入れようとするだろうか。スーツと答える人が多いと思う。
カーディーラーの営業マンが、上下ジャージ姿で「クルマを契約してください」と言ってきたら、あなたはクルマを買うだろうか。「まずはその服装をどうにかしろ」と、苦言を呈したくもなるだろう。
他人の身なりに対してドレス効果が働く一方、自分の身なりを変えてもドレス効果があることも分かった。高齢女性にウェディングドレスを着て写真撮影をしてもらうと、その後の活動が活発になり、明るく社交的になるという。
着飾る、乗り込む、目にするだけで、一定のドレス効果は生み出される。クルマという人の体よりも圧倒的に大きく、過大な力を発生するものを動かしているとき、人の感覚がどのように変化するのかは、容易く想像できるだろう。
■ハンドルを握ると性格が変わるのは当たり前、知っていれば感情は抑えられる
クルマに乗ると乱暴になる、横柄な態度になるというのも、ドレス効果のひとつだと言われている。クルマの大きさや力を、自分の大きさや力だと思い込み、普段よりも外に対して攻撃的になるというわけだ。
「あの人は運転すると人が変わる」と言われる人の多くは、クルマによるドレス効果を受けている可能性があるということ。
これを知らないままでいると、攻撃的になっていることにも気づかず、自分を冷静にさせる術も持たない状態でクルマを運転することになる。
煽り運転の加害者になる人のクルマが、大型SUVや大型ミニバンであることが多いのも、こうした心の変化が、原因の一つにはなっているのかもしれない。
クルマに乗ったときは、もしかすると知らず知らずのうちに自分の力が大きくなったと誤認してしまうかも。ただ、それを予め知っておけば、カっとなった時にも冷静さを取り戻すことができるはずだ。
■強くなりたいから強そうなクルマが売れる?
長引く不況の折、クルマも安い小さなものが売れるかと思いきや、最近はSUVが大ブームだ。社会でいろいろなことに押し込められることが多い昨今、クルマの運転では暗い気持ちを晴らしたいという思いもあるのだろうか。
SUVを代表とする強靭でタフそうなクルマに人気が集まる。これもドレス効果の一つなのだという。
黒いクルマに人気が集まるのも同じような理由だ。人はそこに権威や強さを感じ、自分と一体化できるクルマで、それを表現しようとする。
ストレスフルな現代だからこそ、SUVが売れるという構造。特に我慢が多い日本人には、溜まったものを開放する良いクルマなのだろう。
心理学は絶対ではない。ただ、クルマに大きく関係してきそうなドレス効果については、「こうしたこともある」と認識しておいた方が良いと思う。
クルマは相棒であり、身に纏う服と同じ役割を果たすものだ。その価値や存在に対して、認識を改める必要があるかもしれない。