タイヤバーストで事故ったら「知らなかった」じゃ通らない!! 猛暑シーズンは要注意!!
口コミを書く
口コミを見る
ベストカーWeb より

パンクしたことがあってもバーストまで経験した人は少ない。パンクであれば徐々に空気が抜けるため、ゆっくり路肩に寄せることも可能だが、万が一バーストしたら? そしてバーストが原因の事故を起こしてしまったら?
文/山口卓也、写真/写真AC、イラストAC
パンクとバーストの違いとは?
パンクは、タイヤに釘や異物が刺さったり、縁石などにタイヤをぶつけてしまうことでできる穴や損傷部から徐々に空気が抜けていく現象。
いっぽうバーストは、大きな破裂音とともに一瞬にしてタイヤが破裂する現象。
ともに、ハンドル操作やブレーキ操作が行いにくくなることでクルマを制御することが難しくなり、制御不能になることで事故を起こす、慌ててしまって急ハンドルや急ブレーキを行うことで周囲のクルマをも巻き込む事故を引き起こす可能性がある。
ただ、バーストは破裂音とともにタイヤのゴムが飛び散ることで周囲のクルマに損傷を与えたり、爆発の衝撃で他車のガラスやボディに大きな損傷を与えることもある。
また、一瞬にしてクルマを制御できなくなることもあるから、パンクと比べて非常に危険な現象と言える。
夏の高速道路ではタイヤトラブルが多発する
2024年4月から2025年3月におけるJAFロードサービス出動理由を見ると、一般道路でのタイヤトラブルは全体の約20%であるのに対し、高速道路になるとその2倍の約40%に。
また、猛暑となる8月はタイヤトラブル、特に高温によるタイヤのゴム質への影響やタイヤの過熱、タイヤの空気圧が増加しやすくなることからバーストが発生しやすくなっている。
バーストの主な原因は、タイヤの空気圧過多や空気圧不足、負荷能力を超えた状態での使用、タイヤの損傷・摩耗・劣化など。ではなぜ暑い時期にバーストが起きやすいのか?
●空気圧過多・不足、負荷能力を超えた状態での使用
空気圧過多の状態で暑い時期に高速走行すると、タイヤ内部に熱がさらに伝わることで空気が膨張し、空気圧が上昇してバーストする。
空気圧不足で高速走行すると、横から見てタイヤは波状に変形し始めるがこれを「スタンディングウェーブ現象」という。
これは空気圧不足や積載過多(負荷能力を超えた状態での使用)によるタイヤの潰れ部分のたわみが大きくなり、高速走行によってこのたわみが多重に起こるためだが、「スタンディングウェーブ現象」自体は暑い時期とあまり関係がない。
しかし、夏は家族や友人との乗り合わせやレジャー用品を多く積載しての高速道路利用も増えるために積載過多になる可能性が高まり、それによるスタンディングウェーブ現象が起こる可能性があることは想像できる。
また、スタンディングウェーブ現象によってたわんだタイヤが、暑い時期にはさらに熱を持つことでタイヤ内部のベルトとゴムが剥離しやすくなってバーストしやすくなることも。
●タイヤが損傷・摩耗・劣化している
夏のアスファルト路面は熱を吸収しやすく、暑い夏ともなると路面温度は60℃を超えることも。さらに走行時はタイヤと路面との摩擦熱も相まってさらにタイヤの温度は上昇する。
そしてタイヤは熱せられることで柔らかくなり、異物の貫通やひび割れが起きやすくなり、タイヤに損傷・摩耗・劣化があると一気に進行してバーストしやすくなる。
バーストによる事故でも過失責任が問われる?
2006年11月、大阪府内の道路で信号待ちしていた大型クレーン車の左前輪がバーストし、隣の車線にいた乗用車が風圧の直撃を受けた。
バーストしたタイヤは異常摩耗しており、この事故の1カ月前には右タイヤがバーストし、この際に今回バーストした左前輪以外のタイヤは交換されていた。左前輪は摩耗が進んでいないと判断され、残されていたという。
また、別の事故では、トンネル内を走行していた大型トラックが路上に落ちていた金属片を踏み、右前輪がバースト。対向車線を走行中の乗用車と正面衝突し、さらにこの衝突事故で立ち往生していた2台に、別の後続車が追突するなどが起こった。
これらの公判では、「バーストが予見された状態だったのにそれを怠った」「バーストした場合でも早期にブレーキをかけたり、ハンドルをしっかり保持するなど、バースト後の運転者による事故防止策が足りなかった」などとされ、有罪判決を受けている。
バーストは、自車のタイヤ管理をきちんと行っていればほぼ防げるものだが、完全に防ぐことは難しい。とはいえ、もし自車にバーストが起きてしまったら? 起こさないために何をすればよいのか? は知っておきたい。
バーストを回避するためのチェックポイント
バーストの多くは自身による日常点検で防ぐことが可能で、ポイントは次の3つ。
1.タイヤの空気圧は適正か?
クルマの指定適正空気圧は運転席側ドア付近、給油口などに貼られる空気圧表示シールに記載してあるが、純正ではないサイズのタイヤを履いている場合も純正と同等の負荷能力になるような空気圧にする必要がある。その空気圧が自身で判断できない場合は、タイヤ専門店などに相談!
ちなみに、乗用車用タイヤは1カ月に約5%も空気圧が低下すると言われており、3台に1台は空気圧不足で走行しているという……。
2.釘やガラスなど、タイヤに異物が刺さっていないか?
事業用ではない自家用車であれば運行前点検の義務はない。しかし、高速道路を走行する前や洗車時などであれば、タイヤの目視点検は可能な限り行うべき。
万が一異物が刺さっているのを見つけてもすぐに抜かないこと。異物を抜くと空気がすぐに抜けて走行不能になるため、スペアタイヤへの交換など、作業に自信のない人はタイヤ専門店などで対処してもらう。
3.タイヤの骨格を形成するコードに達するキズやひび割れはないか?
タイヤをよく見ると、タイヤサイドやショルダーに細かなひび割れがあるものもある。これが果たしてコードに達しているか? を判断することは難しく、少しでも不安がある場合はタイヤ専門店などに相談。
万が一、高速道路でバーストしてしまったら?
高速道路では原則として停車や駐車は禁止されているが、故障などが原因で十分な幅がある路肩や路側帯にやむを得ず駐停車することは例外として認められている。
万が一、自車がバーストしてしまった場合は次の4つの行動を!
1.ハザードランプを点灯させ、路肩に寄せる
バーストの衝撃に慌てて急ブレーキ・急ハンドル操作をしないように、ハザードランプを点灯させて落ち着いて自車を安全な場所まで移動させる。
2.発炎筒・停止表示器材を車両後方に置く
停車後は、同乗者がいる場合はガードレールの外側などに避難させ、停止表示器材を自車より50m以上後方へ置く。発炎筒は停止表示器材より後方に置き、後続車に注意を促すこと。
3.自身はガードレールの外側などに避難
同乗者に続いて自身も避難するが、万が一後続車に追突された場合に自身や同乗者がこの事故に巻き込まれないよう、必ず「自車停止位置より手前に」避難する。
4.非常電話か携帯電話で救援依頼をする
高速道路の1kmおきには非常電話があり、受話器を上げるとすぐに道路管制センターにつながる。携帯電話の場合は、救援側が場所を特定できるよう路肩にあるキロポストの数字を伝えること。
特に高速道路上は非常に危険なため、バーストしたタイヤをスペアタイヤに交換するなどの作業は絶対に行わないほうがいい。救援の電話連絡時にJAFへ救援依頼をし、自身は安全な場所で待機したい。
バーストは、他のクルマやドライバー・同乗者、そして歩行者をも巻き込みかねないうえ、自身をも危険にさらしてしまう重大トラブル。特にタイヤトラブルが起きやすい猛暑シーズンには十分注意してほしい!